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[標本番号:No.284 採集日:2007/07/07 採集地:栃木県、日光市] [和名:コスギゴケ 学名:Pogonatum inflexum] | |||||||||||||
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6日ぶりにコケの観察をする時間を捻出できた。7月7日に日光の標高1,300m付近で何種類かのスギゴケの仲間を採取した。いくつかは既に何度も観察済みのものだったので、あらためて撮影などはしなかった。コスギゴケは2度目だったので記録として残しておくことにした。 腐植土に出ていたものは、背丈2〜3cmで(a)、一部に朔をつけていた(b)。朔は既に帽も蓋もとれ、口膜も破れたものが目立った。乾燥すると葉が強く巻縮する(c)。葉は線状披針形で、透明な鞘部はやや卵形。葉縁には歯があるが、鞘部周辺は全縁である(d, e)。 葉の横断面を切り出して(f)、薄板の様子を観察した。薄板は5〜7細胞の高さで、端細胞は横断面で楕円形〜菱形(g)。薄板を縦断面からみると、中肋上部のものでは、ほぼ6細胞の高さ(h)、中肋から外れた位置では、5細胞の高さのものが多い(i)。いずれも、端細胞の部分は、丸みを帯びている。薄板を葉の上面からみると、横長の楕円形が並ぶ(j)。 朔柄は長さ2〜2.5cmで、表面は平滑。朔は筒状で、ほぼ直立している(b, k)。朔に稜のようなものはなく、朔歯は32枚ある(l)。 薄板の様子を観察した時点でコスギゴケだろうと推定されたが、念のために、他の部分も観察した。今春ころまでは、スギゴケ類の薄板の縦断面をいちいち切り出していた。しかし、薄板を一枚だけ縦に切り出すのは意外と面倒だ。このため、6月頃からは切り出しは止めて、薄板をそのままバラして観察するようにした。バラバラにしてしまえば、中肋上の薄板や、葉の端近くの薄板を簡単に観察できる。生活の知恵といったものだろう。 |
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