HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.297 採集日:2007/07/22 採集地:三重県、いなべ市] [和名:オオギボウシゴケモドキ 学名:Anomodon giraldii] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
7月に三重県いなべ市の沢沿いで採取したコケが忘れられたまま、標本袋の中で、すっかり乾燥していた(a)。現地での生態写真は撮っていなかった。水没させると葉が茎から開出して反り返るように開いた(b)。乾湿状態で葉の様子はかなり異なる(c)。 やや乾燥した明るい岩に緩いマットを作っていた。茎は、不規則に分枝し、長さ7〜8cmに及び、毛葉などはない。二次茎は長さ2〜3cmほどある。枝葉は長さ1〜1.5mm、卵状披針形で、基部は下延し、葉縁は全縁、丈夫な中肋が、葉頂直下に終わり、葉縁はしばしば反り返る(d)。茎葉は枝葉とほぼ同じ形だが、枝葉と比較して、基部がかなり広く、葉長もやや長い。 葉身細胞は、葉頂周辺から葉身中央部では多角形で、著しく厚壁、長さ6〜12μm、背腹両面の表面には3〜5つの乳頭があり、葉の基部では長さ30〜40μmの矩形となり、厚い膜にはくびれがみられる(f〜h)。KOH溶液で葉身が黄色になる(f, h)。 葉の横断面をきりだしてみた(i)。中肋にはガイドセルが目立ち、背面に未発達のステライドらしき構造がわずかにみられる(i, k)。葉の基部では、中肋に近い葉身細胞に乳頭がない(k)。茎や枝の断面をみると、いずれも中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(l)。
現地で生態写真を撮影しなかったことが悔やまれた。葉が卵状披針形〜舌形をして、葉身細胞が乳頭を持ち、方形〜多角形をした蘚は、ギボウシゴケ属、タチヒダゴケ属、キヌイトゴケ属にある。ギボウシゴケ属は樹状に分枝せず硬い感じで背丈が低く、タチヒダゴケ属は樹幹に着き背丈の小さなものが多い。見当すべきはシノブゴケ科のキヌイトゴケ属だけでよい。 |
|||||||||||||