HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.318 採集日:2007/08/25 採集地:長野県、富士見町] [和名:エゾムチゴケ 学名:Bazzania trilobata] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
入笠山の標高1815m付近、イワダレゴケとムツデチョウチンゴケが支配的なコケ層の中で採取した苔類を観察した。茎は長さ4〜8cm、幅5〜8mm、二叉状に分枝し、密に葉をつける。 標本として採取した個体を裏返すと、茎から多数の鞭がでていた(b)。葉は倒瓦状に重なり(c, d)、卵形で葉先は3裂している(g, h)。腹葉は小さく不透明で(g)、幅は茎幅の1.2〜1.8倍で、茎から斜めに開出し、偏平で上端には歯がある(e, f)。 葉身細胞は丸みを帯びた多角形で、長さ20〜50μm、細胞膜は厚く、トリゴンは大きい(j)。葉を含めて茎の横断面を切りだしてみた(k)。表皮細胞は小さく厚膜で、内部は薄膜大型の細胞からなる。葉の付き方が面白い。鞭には小さな葉と仮根がつき、横断面をみると、やや大型の表皮細胞をもつ(l)。 ムチゴケ科ムチゴケ属まではすぐにわかる。ムチゴケ属の検索表をたどると、エゾムチゴケ Bazzania trilobata に落ちた。ただ、腹葉の幅が図鑑の記述よりせまい。腹葉の縁は透明だが、それ以外は側葉と同じような緑色である。古くなって茶褐色になった腹葉では全体が透明のものもある。ムチゴケ B. pompeana の可能性も否定できない。 |
|||||||||||||