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[標本番号:No.344   採集日:2007/10/07   採集地:福井県、敦賀市]
[和名:ホソバオキナゴケ   学名:Leucobryum juniperoideum]
 
2007年10月25日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
 海浜生の菌類であるケシボウズタケ属 Tulostoma 探索のために、福井県敦賀市の気比の松原を歩いた。砂浜を歩いた後、防風林の黒松林を歩きながらふと足下をみると、こんもりと白っぽい小さな塊状のコケが目立った(a〜c)。この松林樹下で最も支配的な蘚類であり、たぶんホソバオキナゴケだろうと思ったが、念のために持ち帰っていた。
 茎は高さ2〜2.5cmで、一部に枝分かれしたものがある(d)。下部は茎も葉も褐色となって厚い層をなしていた。乾いても葉が茎に密着することなく、姿はほとんど変わらない。葉は、卵形の窪んだ基部から披針形に伸び、長さ3.5〜5cm、先端部まで樋状に腹側に窪んでいる(e)。
 葉身細胞は、表層部では矩形で透明、長さ40〜60μm、幅20〜30μm(g)、内部に合焦してみると、丸みを帯びた矩形で、葉緑体を含んだ細胞が縦に並ぶ(h)。葉は、基部では厚く、中央部から先端部では、基部よりやや薄く、ほぼ同じ厚みとなっている。
 最初に葉の基部あたりで横断面を切ってみた。葉には、背側に3〜4層、腹側に2〜3層の透明細胞があり、中央に一層で並ぶ細い葉緑細胞を、これらの透明細胞がサンドイッチ状にはさんでいる。横断面の中央部では、透明細胞は背腹ともに1層で、全体がくびれたような形をし、葉縁では葉緑細胞はなく、透明細胞だけが1層に並ぶ(h)。
 葉の中央部から上では、葉緑細胞を挟む透明細胞は腹背両面とも1層で、縁近くまで葉緑細胞がある(i)。茎の横断面には中心束はない(j)。
 ホソバオキナゴケ Leucobryum juniperoideum に間違いなさそうだ。それにしても、砂地の松林樹下にも大きな群落をなしてでるとは思ってもいなかった。