HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.368 採集日:2007/10/30 採集地:埼玉県、小川町] [和名:タチゴケ属 学名:Atrichum sp.] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
10月も終わりの頃、埼玉県小川町にある金勝山の標高210m付近で、ナミガタタチゴケによく似た小さなスギゴケ科の蘚が、半日陰の土の斜面にいくつも群落をなしていた(a, b)。茎は長さ1.5〜2cm、乾くと強く巻縮する(c, d)。朔や雄器をつけた個体はなかった。 葉は、長さ4〜7mm、披針形で(e)、葉縁には2〜3列からなる舷があり(k)、葉縁上半には、鋭い二重歯がある(h〜j)。葉には横シワがあり(f, g)、シワに沿って背面に歯があり(g)、中肋が葉頂に達し、中肋背面には鋭い歯がある(h)。中肋上に3〜6列の薄板がある(e, f) 葉身細胞は、葉の中程で中肋近くでは、丸味を帯びた方形〜六角形で、長さ10〜18μm(l)、葉縁付近では、長さ8〜15μm(k)、鞘部付近では矩形で、長さ25〜30μm、幅10〜15μm(m)。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
中肋上に並ぶ薄板を腹面上部からみると、方形〜矩形の細胞が並ぶ(n)。この薄板を葉から外して縦断面をみると、上面の細胞は平滑で薄膜(o)、葉の横断面で中肋付近をみると、3〜4列の細胞からなる薄板が見え、上端細胞の表面は丸く平滑である(p)。鞘部の横断面をみると、薄板はない(q)。念のために茎の横断面を確認した(r)。
タチゴケ属 Atrichum であることは間違いなさそうだ。検索表をたどると、ナミガタタチゴケとヒメタチゴケの両者、そしてナミガタタチゴケの変種とされるムツタチゴケの3者が残る。ナミガタタチゴケにしては、葉の横シワが弱く、植物体もやや小さく、葉身細胞も小さい。残るのはムツタチゴケとヒメタチゴケということになる。 |
|||||||||||||