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[標本番号:No.372 採集日:2007/10/28 採集地:東京都、青梅市] [和名:ツリバリゴケモドキ 学名:Bryohumbertia subcomosa] | |||||||
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10月28日に行われた岡モス関東の観察会の折りに、スギ植林地の標高340mあたりで、薄暗い地表から出ていた繊細なコケを採集した(a)。暗い場所だったこともあって、生態写真は撮らなかった。ツリバリゴケモドキ Bryohumbertia subcomosa だろうとのことだった。 植物体は高さ10〜12mm、茎の部分の高さは数ミリ程度(b)。持ち帰ってそのまま乾燥した標本には、奇妙に曲がった朔柄がみられる。葉は、針状で長さ5〜8mm、基部は赤褐色を帯び幅広く、葉全体は樋状で、葉先付近には歯があり(e)、葉縁は先端付近を除けば全縁で、中肋が細身の葉の1/3(基部)〜4/5(葉先)の幅を占めて、葉先まで伸びている(c, d)。 葉身細胞は、葉の多くの部分では矩形で、長さ20〜50μm、幅12〜18μm、やや厚壁(e)、翼細胞が明瞭に分化し、大形の方形の細胞からなる(f)。 |
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葉の横断面を数ヶ所で切りだしてみた。葉先に近づくにつれ、横断面は中肋部が大部分となっていく(g, h)。中肋には顕著なガイドセルがあり、背面ではステライドが発達しているが、腹面ではステライドの発達は悪い(h)。基部に近い部分では、ステライドが全く見られないものもある(i)。茎の横断面をみると、表皮細胞はほとんど分化せず、中心束もない(k)。 朔には僧坊状の帽、嘴状にとがった蓋があり、乾燥すると縦シワが入る(k)。興味深いのは乾燥した朔柄は大きく曲がり、移動中のヘビや、白鳥の首を連想させる(k, l)。帽の下縁には房状に毛が生えている(k, m, n)。なお、朔は傾いてつき、非相称(l)。朔表面に気孔はみられない。帽を落射照明と透過照明で見た(m)。房状の毛は、それぞれ単一の細胞からなる(n)。 |
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朔歯は1列で16本、中程まで2裂し、先の方は細く糸状に伸びる(l, o, p)。細い上部は微細なパピラに覆われ(p)、朔の外面には縦条が目立つ。一枚の朔にカバグラスの上から軽く圧を加えると、縦条がさらに明瞭となった(q)。胞子は球形で、径8〜20μm。 このシッポゴケ科の蘚は、典型的なツリバリゴケモドキ Bryohumbertia subcomosa のようだ。本種は保育社図鑑には掲載がなく、平凡社図鑑によれば、「口環は分化する」とあり、図も掲載されている。観察した標本では、明瞭に分化した口環を確認することはできなかった。 |
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