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[標本番号:No.341 採集日:2007/09/23 採集地:群馬県、水上町] [和名:サンカクミズゴケ 学名:Sphagnum recurvum var. brevifolium] | |||||||||||||
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昨年採取してそのまま放置状態となっていた最後のミズゴケを観察した。上州武尊山中腹標高1,520m付近の小さな湿原に出ていたもので(a, b)、明るく開けてはいるが、しばしば水没する環境にある。茎は長さ8〜12cm(c)、緑褐色〜黄褐色をしている。乾燥すると、枝葉がやや波打ったような状態となる(d)。開出枝と下垂枝はほぼ同じ長さで、葉を含めた幅は、開出枝と下垂枝の太さには極端な差はなく、下垂枝が若干細い程度だ(e)。 茎葉は、卵状正三角形〜卵状二等辺三角形で、長さ0.7〜0.9mm、先端部がわずかに総状に裂けた葉が多く(f)、先端が鋭く尖った葉は少ない。茎葉の縁には明瞭な舷があり、基部では全体に大きく広がり(g)、茎との接触部の細胞が独特の形をしている(h)。 茎の表皮細胞は、長い矩形で表面に穴はない(i)。茎の横断面で、表皮細胞と木質部との境界は不明瞭である(j)。中には、大形薄膜の表皮細胞が偏って肥厚したものも見られる(x)。 開出枝でも下垂枝でも、枝葉の形や大きさはほぼ同じで、長さ1〜1.2mm、卵状披針形で鋭く尖り、中程から上の縁は内側に巻き込む(k, l)。なお、(k)の上向きの葉は開出枝の葉、下向きの葉は下垂枝の葉、(l)の上側の葉は開出枝の葉、下側の葉は下垂枝の葉である。 |
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開出枝と下垂枝の葉の葉身細胞を、それぞれ背腹両面で、葉の先端部、中央部、縁、基部など、いくつかの場所で確認した。透明細胞の大きや、孔の様子が少しずつ異なっていた。そのうちから6枚ほど掲げた。開出枝の葉の腹面上部(m)と中央部(n)、背面上部(o)と中央部(p)、下垂枝の葉の腹面中央部(q)、背面中央部(r)である。下垂枝の葉の背面中央部には偽孔があり、開出枝の葉には、透明細胞の端に小さな孔がある。 それぞれ、合焦位置を変えながら観察すると、糸、偽孔、貫通する孔などがわかるが、画像合成でもしない限り、一枚の写真でそれらを表現することは困難だ。孔について正確に表現するためには、多くの画像提示が必要とされ、非常にくどいものとなる。それもあって、ここでは透明細胞の孔についての詳細な記述(=解釈)は敢えて避けた。 枝葉横断面で、葉緑細胞は正三角形〜二等辺三角形で、背面に広く開く(u, v)。葉の大部分では、腹面に開くことはほとんど無いが、葉の部位によっては、背腹両面に開いたものもある(w)。これは、開出枝の葉でも、下垂枝の葉でも同じ傾向がみられた。 枝の表皮細胞をみると、レトルト細胞の首は短く(s)、枝の横断面では、2つの大きなレトルト細胞をもったものが多かった(t)。
これまで見てきたミズゴケ類とは多くの点で異なっていたので、葉身細胞などについて少していねいに観察した。複数の検索表にあたると、いずれもハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata に落ちる。ハリミズゴケ節は11種+2変種が知られているという。ハリミズゴケ節の同定には、他のミズゴケ属とは違った観察ポイントがあるようだ。他の節では、枝葉は開出枝の葉をみればよいのだが、ハリミズゴケ節では、下垂枝の葉についても観察が必要とされる。
今回観察した標本では、茎葉の先端がわずかに総状に裂けているものが多く、これだけみると S. recurvum var. recurvum についての解説に合致する。しかし、茎の表皮細胞の形をみると、S. recurvum var. brevifolium に合致する。さらに、茎葉や枝葉の大きさをみると、上記3変種のなかで、S. recurvum var. brevifolium が最も近い。偽孔と背腹に貫通する孔については、3変種のどれにも該当するように思える。 |
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