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[標本番号:No.375   採集日:2007/12/22   採集地:栃木県、佐野市]
[和名:ヤマトケビラゴケ   学名:Radula japonica]
 
2008年1月14日()
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
  (j)
(j)
(k)
(k)
 昨年12月に栃木県佐野市の鍾乳洞(alt 100m)で、石灰岩についていた一群のタイ類を持ち帰った(a, b)。肉眼的に純群のようにみえる部分だけを採集した。ところが、昨日採集袋から取り出してみると、複数のタイ類が複雑に絡み合い、さらに、微小な蘚類も混じっていた。
 しかし、群の90%ほどはクラマゴケモドキ属、7〜8%程がケビラゴケ属のタイ類だった。そこで、残りのタイ類と蘚類を取り除いて、主要な2種だけを観察することにして、昨日とりあえず分別作業をした。まずは、2種のうち小形のケビラゴケ属を観察してみた。
 茎は長さ1〜2cm、不規則に羽根状に分枝して、背片は重なりあって倒瓦状につき、茎を覆っている(c 左側、d, e)。背片は、類円形で、長径0.7〜0.9mm、短径0.4〜0.6mm、全縁で、眼点などはない。腹片は方形で全縁、背片の2/5〜1/2長、キールは直線状で、茎を覆う(f〜h)。腹葉はない。葉身細胞は、長さ15〜30μm、六角形で薄壁、トリゴンはほとんど無く、楕円形で大きな油体が各細胞に一つある。油体表面は微粒に覆われる(i)。
 興味深いのは、仮根が腹片の中程から束になって出ていることだ(g, j)。仮根を拡大してみると、先端が音叉のように枝分かれしているものが多い(k)。

 葉が倒瓦状に重なり合い、背片が腹片より大きく、腹片は方形で長いキールを持ち、仮根が腹片の中程から出て、腹葉はなく、油体が1細胞に一つあること、などからケビラゴケ属のタイ類であることは間違いない。
 ケビラゴケ属の検索表をたどると、ヤマトケビラゴケ Radula japonica に落ちる。種についての解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。なお、今回の標本は、クラマゴケモドキゴケ属のタイ類から、ほぐしながら分けている過程で、多くの枝が外れたり、葉の一部が破れてしまった。次に出会った折りに、花被、雄花、雌花などを観察することにしたい。