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[標本番号:No.495   採集日:----/--/--   採集地:−−−、−−−]
[和名:ナンジャモンジャゴケ   学名:Takakia lepidozioides]
 
2008年2月24日()
 
ナンジャモンジャゴケ
 
 昨日、国立科学博物館 新宿分館で行われた「自然史セミナー コケ類の分類」講座に参加した。この講座は10年前に始まり、毎年一度行われ、今年でちょうど10回目だという。今回のテーマはナンジャモンジャゴケ属。講師はずっと同館植物研究部の樋口正信博士だ。
 昨年のテーマは「ジャゴケとヒメジャゴケ」だった。今年は開講10周年目でもあり、日本の研究者によってナンジャモンジャゴケが新種発表されたときから、ちょうど50周年目にあたることなどから、ナンジャモンジャゴケ属をテーマにしたということだった。
 一度じっくり観察してみたいと思っていたので、非常にありがたい企画だった。標本を見ることはできても、直接自分の手で顕微鏡を使って観察する機会というものはそうは得られない。40分ほどの座学のあと、すぐに実習に入った。受講者一人に対して実体鏡と生物顕微鏡をそれぞれ、一台ずつ与えられているので、じっくりと観察することができた。
 参加者には、少量だが観察するには充分すぎる程の量の標本が与えられた(a)。まだ緑色部が残る生きたナンジャモンジャゴケと、すっかり乾燥して茶褐色になったヒマラヤナンジャモンジャゴケの標本だ。実物を手にしたのは初めてだった。この属には今のところ、この2種しか知られていないということで、資料に掲載された検索表はいたって簡単だ。
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
 ここに掲げた写真は、昨日観たものの再現である。昨日は、もっぱら実体鏡で切片を作り観察したが、顕微鏡撮影のできるカメラはもっていなかった。そこで、持ち帰った試料を今朝再び観察した結果が、上記の写真となった。
 植物体の長さは1cmほど(a)。緑色の部分を選んで水没させると、スギナを思わせる様な姿をみせてくれた(b)。仮根はなく、茎の上部に棒状の葉をつける。葉は、何本かがまとまって茎につくが、簡単に茎から外れてしまう。実体鏡を覗きながら、絡んだ個体をほぐしていると、いとも簡単に葉が落ちてしまう。外れた葉は、丸い棒状なのでコロコロと転がる。
 葉の付け根の周辺を拡大してみた(c, d)。茎も葉も表面の細胞は同じような形で、矩形をしたものが並ぶ。茎には小さな粘液毛がみられる(e)。ちょっと分かりにくいので、茎を縦断すると、粘液毛が明瞭に捉えられた(f, g)。ついでに茎を縦断して表皮細胞をみた(h)。
 葉の横断面をみると、ヒマラヤナンジャモンジャゴケとの差異は明瞭にわかるという。種の同定には横断面観察が大きなポイントとされる。ヒマラヤナンジャモンジャゴケと比較して、葉の横断面の表皮細胞は薄膜で細胞数が少ない。葉の中程(i)と基部(j)とでは、表皮層の内側の細胞数が違う。茎の横断面をみても、組織分化はあまりみられない(k)。葉が比較的密に着いた部分で、両者を一緒に切り出してみた(l)。それぞれのサイズを明瞭に比較できる。

 ナンジャモンジャゴケは国内ではまだ、日本海側でしか見つかっていないという。微妙な位置にあるのが日光だということだった。今年は、きのこ採取・観察・撮影などで忙殺されるため無理だろうが、遠からず群生するナンジャモンジャゴケを見つけたいと思う。国内でも朔をつけた個体が見つかっても不思議はない。