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[標本番号:No.410 採集日:2008/03/01 採集地:千葉県、君津市] [和名:コバノチョウチンゴケ 学名:Trachycystis microphylla] | |||||||||||||
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3月1日に千葉県君津市の久留里城址周辺で採取した蘚類のひとつである。タマゴケに混じって、暗緑色で葉が強く巻縮したコケが密集していた(a)。所々に明緑色の若い新芽も見られる。湿らすと縮んでいた葉が伸び、茎から離れて色が鮮やかになった(b)。 植物体は立ち上がり、茎は長さ2〜2.5cm。葉は楕円状披針形で、長さ2〜2.5mm、葉に舷はなく、上半の縁に歯があり、先端は鋭く尖る。太い中肋が葉先に達し、頂端付近の背面には数個の歯がある(c〜f)。中肋は透明感が強く葉身部より明るくみえる。 葉身細胞は、丸味を帯びた多角形で、長さ幅ともに8〜12μm、中央に1つ、一部に複数の顕著な乳頭がある(h)。葉頂では長楕円形の細胞もあり(g)、葉の基部でも細胞の分化はなく、乳頭がやや少ない、あるいは低い程度(i)。細胞壁は厚い。葉の横断面をみると、中肋部には葉緑体がほとんどなく、背腹両面にステライドがある(j)。葉身部の背腹両面には顕著な乳頭がみられ、葉縁の細胞は単層である(k)。茎の横断面はほぼ五角形で、厚壁の小さな細胞が表皮をなし、中心束がある(l)。 検索表をたどるのは簡単だった。コバノチョウチンゴケ Trachycystis microphylla だろう。コバノチョウチンゴケはこれまでにも何度か詳細な観察をしているが、いずれも乾燥時に採取したものではなく、瑞々しい新鮮な状態での採取・観察だった。おそらく乾燥した群落には何度も出会っていたのだろうが、コバノチョウチンゴケとの認識ができなかっただけだったのだろう。 |
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