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[標本番号:No.395 採集日:2008/03/08 採集地:埼玉県、小鹿野町] [和名:コスギゴケ 学名:Pogonatum inflexum] | |||||||||||||
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3月8日に双子山から、スギゴケ科の標本を持ち帰った。現地でルーペで見てニワスギゴケ属 Pogonatum の蘚類だろうと思い、これまでずっと放置したまま忘れていた。3月29日に栃木県で採集したコケを調べてみようと標本を引っ張り出したところ、はじめて標本No.395が残っていることに気づいた。結果の一部を記しておくことにした。 残雪の豊富に残った双子山の標高600mあたりの石灰岩に群生していた(a)。現地では白いフェルト状の帽を被った朔をつけていたが(b)、持ち帰った標本には帽はほとんど残っいなかった。茎は高さ3〜5cm、枝分かれせず、乾燥して葉が縮れていたが、湿らすと広がった(c)。 葉は卵形の鞘部をもち、急に反り返るように披針形の濃緑色部が続く。鞘部は薄膜透明で、披針形の部分には腹面全体に薄板が縦に密に並ぶ。披針形の部分は葉の中程が最も幅広で、中肋が先端に達する。鞘部は全縁だが、披針形の部分の縁には全周に単生の歯があり、中肋背面上部にも大きな歯がある(d〜f)。 葉身細胞は丸味を帯びた方形〜矩形で、長さ10〜20μm(g)、葉の腹面からみた薄板端面の細胞は、横長の楕円形がそろばん玉の様に連なる。鞘部の葉身細胞は長めの矩形。葉の横断面をみると、薄板は細胞5〜6の高さがあり、端細胞はほぼ平滑で凸凹しているが、細胞膜の厚みは、他の薄板構成細胞とあまり変わらない(i)。葉の縁の細胞は1層(j)。薄膜を外して横に倒してみると、上面端の細胞はほぼ平滑で、軽く凸レンズ状の丸味を帯びる(k)。茎の横断面では、表皮部分、随の部分、中心束が明瞭に分化してよく発達している(l)。 |
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標本には、長さ22〜28mmの柄をもった朔がついていた。標本に帽は失われ、蓋をつけた朔が多かった。朔は円錐形で柄に直立し、蓋は円盤状の台座に円錐をつけたような姿で、表面はザラザラしている(m, n)。朔歯は32枚、朔の口はは薄膜で被われている(o)。 朔柄の表面は平滑、横断面でみると、配偶体の茎と同様に、明瞭な3層構造をしている(p)。朔を横断面で切り出してみた(q)。朔壁の表皮には大きな乳頭がついている(r)。ルーペで朔表面をみたとき、ざらついて見えるのはこの乳頭のためらしい。
乾燥すると葉が縮み、葉縁には舷はなく単生の歯があり、朔柄は長くて平滑、朔には稜がなく、薄板が葉腹面の全体を被っていることから、ニワスギゴケ属 Pogonatum に間違いない。保育社の図鑑で種への検索表をたどると、葉縁の細胞は1細胞厚、薄板の端細胞は単生で微細なイボしかなく、側面からみて上端面の細胞は凸凹している、などからコスギゴケ P. inflexum ないし、その近縁種となる。 |
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