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[標本番号:No.403 採集日:2008/03/29 採集地:栃木県、佐野市] [和名:ヘリトリシッポゴケ 学名:Dicranodontium fleischeriana] | |||||||||||||
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栃木県の山中(alt 260m)で、沢沿いの側壁に着生していた蘚類を、3月29日に採取した(a, b)。観察をはじめたところ、微細な苔類が混生していたため、その苔類の観察が先となり、この蘚類はすっかり後回しとなっていまい、今朝ようやく観察することができた。 茎は、長さ2〜3cm、基部には仮根が密生し、葉には光沢があり、乾湿であまり姿は変わらないが、乾燥時はやや弓形に反る(c, d)。葉は、長さ5〜10mm(e, f)、やや広い基部から漸次狭くなり、針状となって長くのび、芒の尖端には微細な歯がみられる(g)。葉の基部から中程までの部分は全縁で、基部は軽く鞘状となり茎を包む。中肋は薄いが幅広く、基部では1/3ほど、中程から先では、葉幅のほとんどを中肋部がしめる(h)。 葉身細胞は、矩形で長さ35〜60μm、幅4〜8μm、厚壁で平滑(j)。翼部には薄膜で、長さ50〜80μmの大型の細胞が明瞭な区画をなし、それに続く細胞も、長さ30〜40μ、幅25〜35μでやや厚壁となっている。基部の縁の細胞は、長い矩形〜線形の細胞が縦に連なる(j, l)。 |
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葉の横断面を、先端から基部までの数ヶ所で切り出してみた(m)。中肋部は薄くて幅広く、背腹両面に明瞭なステライドがみられ、中央部には大型のガイドセルが並ぶ(n)。鞘部近くでは、中肋に続く部分に薄膜大型の細胞があり、その外側は小さくやや厚膜の細胞となる。茎の横断面では、薄膜で大型の細胞が表皮を構成し、そのすぐ内側は厚膜の小さな細胞層となり、薄膜大型の随細胞を包む(o)。中心束の有無ははっきりしない。 たった一個体だけであるが、朔をつけたものがあった。既に帽や蓋はなく、全体にやや潰れて口が大きく開いていた(p)。朔柄は長さ5mm、表面は平滑、朔は相称。わずかに朔歯の基部が残っていた(q)。胞子は、径12〜18μmで、表面は微細な粒状となっている(r)。 シッポゴケ科の蘚類と思われた。観察結果に基づいて、平凡社の図鑑で属への検索表をたどると、ユミゴケ属 Dicranodontium ないしシッポゴケ属 Dicranum となる。シッポゴケ属で種への検索表をたどると、観察結果と一致するものがない。平凡社図鑑によれば、ユミゴケ属は国内で3種が知られているという。検索表をたどると、ヘリトリシッポゴケ D. fleischeriana に落ちる。種の解説は簡単なものしか記されていないが、観察結果とは矛盾しないように思う。 |
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