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[標本番号:No.426 採集日:2008/04/20 採集地:栃木県、鹿沼市] [和名:ヤマトコミミゴケ 学名:Lejeunea japonica] | |||||||||||||
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栃木県鹿沼市の川沿いの林道(alt 300m)で、転がった樹果の殻斗表面に小さなタイ類が朔をつけていた(a)。茎は長さ1〜1.2cm、殻斗表面をはい、不規則に分枝する。葉は倒瓦状に重なり合ってつき、卵形、全縁、円頭で(b, c)、腹片はとても小さく、背片の1/5程の大きさで、顕著に膨らむ(d, f)。キールは長く、腹片の先端には歯が一つあるが、うまく撮影できなかった。腹葉は、茎の2〜3倍の幅を持ち、類円形〜ハート形で、1/3〜1/2まで深く二裂する(e, f)。葉身細胞は、五角形〜七角形で、長さ20〜40μm、膜は薄く平滑で、小さな油体が一細胞あたり数十個あり、トリゴンはない(i)。 花被は倒卵形で、五稜(五褶)があり、口は細い(g, h)。乾燥状態で花被を上からみると五角形に見える。朔柄は短く、胞子の充満した朔は黒色だが(k)、四裂して胞子を放出した後は透明である(j)。胞子は、不定形というかゾウリムシ型の面白い形をしている(l)。
葉が倒瓦状につき、背片は卵形で、小さな袋状の腹片をもち、キールは長く、胞子は大きく不定形、などからクサリゴケ科 Lejeuneaceae のタイ類だろう。観察結果を基に、図鑑の検索表をたどると、保育社図鑑でも平凡社図鑑でも、ともにクサリゴケ属 Lejeunea に落ちる。
保育社図鑑には、ヤマトコミミゴケとサワクサリゴケについて、「標本にしてから数ヶ月の間に標本袋を徐々に青く染め、しまいには隣の標本まで染めるという変わった特徴をもっており、他に例がない」とあり、平凡社図鑑にも類似の記述がある。 |
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