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[標本番号:No.459 採集日:2008/06/24 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:ホンシノブゴケ 学名:Bryonoguchia molkenboeri] | |||||||||||||
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奥多摩の石灰岩地で採取した蘚類の二つ目を観察した。見るからにシノブゴケ属 Thuidium の蘚類だ。標高700mあたり、林道脇の湿った石灰岩壁に群生していた(a, b)。かなり大形で、やや硬い感じを受けた。標本としてはわずかしか採取しなかった(c)。 植物体そのものは、第一次茎の長さは15cmを超えていた。規則的に数回、羽状に分枝し、茎の左右にほぼ均等に、長さ7〜15mm枝を出していた。毛葉が、茎や枝の表面を密に覆っている(d, e)。茎葉は長さ1.5mm前後で、三角形ないし広卵形の基部から、細く長い針状の先端を伸ばす(f)。基部では深い皺が目立ち、葉縁には微細な歯があり、中肋が葉頂に達する(g)。 葉身細胞は、紡錘形〜長楕円形で、葉先付近では長さ20〜25μm(h)、中央部では20〜30μm(j)、翼部では長さ40μmに及び幅も15μmとなる(j)。葉の中央部から基部にかけての背面には、非常に大きな牙状の乳頭が、各細胞に一つある(k, l)。 |
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茎葉の横断面をみると、中肋にステライドはない(m)。横断面や縦断面にみる牙状の乳頭は巨大で、葉身の厚みと同じほどの長さをもつ(n)。 枝葉は非常に小さく、長さ0.15〜0.25mm、二等辺三角形で、中肋は非常に短く、葉身細胞背面には、各細胞に一つずつ大きな牙状の乳頭がある(o)。この乳頭の長さは、葉厚の倍近くにも達する(p)。茎や枝表面の毛葉は、糸状のものやら、細い板状三角形をしたものがあり、頻繁に枝を出す(q)。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚壁で小さい(r)。
これまで観察してきたシノブゴケ科 Thuidiaceae の蘚類のいずれとも異なる。朔をつけたものは無かったが、枝の分枝の仕方、茎葉の先端付近の形、茎葉や枝葉背面の巨大な牙状の乳頭、などからホンシノブゴケ B. molkenboeri だと判断した。 8. 茎は2〜3回羽状に分枝する平凡社の図鑑もほぼ同様に記される。また、保育社図鑑では種の解説で「(ホンシノブゴケの茎葉の)葉身細胞は平滑」とある。平凡社図鑑では検索表とは裏腹に「茎葉、枝葉とも葉身細胞の背面中央に1個の大形で牙状のパピラがある」と記されている。ちなみに、Noguchi "Moss Flora of Japan" のBryonoguchia molkenboeri の図には、茎葉でも枝葉でも median laminal cells には、明瞭に牙状の乳頭が描かれている。 ここで観察した標本の茎葉には、葉身細胞の背面中央に大きな牙状のパピラがある。したがって、これらの図鑑の検索表をたどるかぎり、ホンシノブゴケ属にもシノブゴケ属にもたどり着くことができず、宙に浮いてしまうことになる。表現がまずくできの悪い検索表ということだろうか。それにしても、どこから「茎葉の葉身細胞は平滑」という記述がでてきたのだろうか。 それとも、この標本はホンシノブゴケではなく、別のシノブゴケ科の蘚なのだろうか? ホンシノブゴケの牙状乳頭はもっと巨大なのだろうか? |
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