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[標本番号:No.439 採集日:2008/06/01 採集地:三重県、亀山市] [和名:クモノスゴケモドキ 学名:Pallavicinia ambigua] | |||||||||
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久しぶりに葉状体の苔類を観察した。とはいっても、採集したのは、1ヶ月以上前の6月1日で、三重県亀山市の川沿いの湿った岩壁についていたものだ(a, b)。油体を観察できるように、チャック付きポリ袋に入れた状態で生かしておいた。 葉状体は斜上し、先の方で二叉し、明瞭な中肋部を持ち、中肋部以外の翼部分は単細胞層となっている。中肋部腹側には仮根がみられるが、腹鱗片や雌包膜のような構造ははっきりと捉えられなかった。葉状体は幅1.8〜2.5mmで、先は丸味を帯び、縁には3〜5細胞からなる毛がまばらにある(c, d)。葉身細胞は、五〜六角形で、長径35〜50μm、トリゴンはほとんどなく、各細胞に油体が8〜15ある。油体は楕円形〜紡錘形で、微粒の集合のような形(e)。 腹鱗片や雌包膜などの観察ができないので、葉の横断面を切り出してみた。翼部のある平べったい部分(f)、中肋部だけの茎のような部分(g)で切り出した(c)。中肋部の中心には、暗色で明瞭な中心束がある(f, g)。中心束の部分の細胞は小さく厚膜(h)。 クモノスゴケ科 Pallaviciniaceae の苔類に間違いなさそうだ。明瞭な中肋部をもつから、チヂレヤハズゴケ属 Moerckia ではなく、葉状体の縁に毛があるからエゾヤハズゴケ属 Hattorianthus でもなく、クモノスゴケ属 Pallavicinia ということになる。雌包膜や雄包膜が観察できなかったが、クモノスゴケモドキ P. ambigua と思われる。
[修正と補足:2008.07.05 pm3:00] |
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葉状体の縁の毛や、横断面の様子(j)、細胞や油体などの観察結果はほぼ同様なので省略した。雌包膜らしきものは、中肋上に円筒状に隆起し先端は長い鉅歯状となっている(m)。そこでこれを含めて中肋部を縦断面で切り出した(l)。その結果が(n)、(o)である。なお、別のものも縦断面で切ってみた(p)。中には造卵器らしきものがみえる(q)。参考のために、雌包膜突起を中肋部からはずして、スライドグラス状で押し潰したものも掲げた(r)。 | |||||||||