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[標本番号:No.497 採集日:2008/08/09 採集地:栃木県、那須町] [和名:ヤリギボウシゴケ 学名:Grimmia elongata] | |||||||||||||
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8月9日に、栃木県那須の三本槍岳に続く岩稜を歩いていると、陽当たりのよい露岩に暗緑色の蘚類が、あちこちでモッコリした半球形の群落を作っていた。標高1750mあたりで、多数の朔をつけた純群落を選んで採集した(a, b)。 茎は長さ1.5〜2cm、あまり分枝せず、乾燥すると葉が茎に密着する(c, d)。葉は狭い卵状の基部から披針形に伸び、長さ1.5〜2.2mm、葉頂は鈍く尖り、縁は全縁、基部では竜骨状となりやや反曲する。太い中肋が葉頂付近に達する(e, f)。 葉身細胞は、葉先や葉身部の多くでは、丸味を帯びた方形で、長さ6〜10μm、葉頂付近と葉縁では2細胞層となっている(g, h)。葉基部では、薄膜で矩形の細胞が並び、長さ15〜30μm、幅8〜10μm、褐色を帯びる(i)。いずれも細胞表面は平滑。葉の各所で横断面を切り出してみた(j〜l)。これらをみると、葉縁は2細胞からなり、葉身本体の細胞は表面が平滑である。中肋にはステライドはない。茎の横断面には中心束があり、表皮細胞は小さくやや厚壁(m)。 |
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朔は直立し、朔柄は2.5〜3mm、帽は朔上半部だけを被い下部は四裂し、蓋の尖りは短い(n, o)。朔歯は一重で16枚。多数の朔をつけていたにもかかわらず、未成熟のものと、朔歯を欠落させたものばかりだった(p)。朔歯は披針形で、表面には微細な乳頭がある(q, r)。口環の有無ははっきりわからない。
採取したときは、センボンゴケ科 Pottiaceae だろうと思った。しかし、葉身細胞をみると、センボンゴケ科のものとは、少し違う。また、朔の帽の形も違うように感じた。さらに、中肋の横断面にステライドがない。とりあえず、センボンゴケ科のなかで、葉身細胞が平滑で、中肋にステライドがなく、葉基部の細胞があまり分化しない属をあたってみた。しかし、該当する属はみつからない。 |
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