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[標本番号:No.440 採集日:2008/06/02 採集地:三重県、亀山市] [和名:オオミズゴケ 学名:Sphagnum palustre] | |||||||||||||
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ずっと冷蔵庫の肥やしとなって放置状態となっていたミズゴケをようやく観察した。今年の6月2日に三重県の関町で採集したものだ(alt 100m)。小さな川の流れの畔、杉の基部周辺に疎らに生えていた(a〜c)。チャック付きポリ袋に入れてあったこともあり、冷蔵庫から取り出すと、採集時とほとんど変わらない姿を保っていた(d)。 植物体は分枝が多く、茎は黒褐色〜茶褐色で、長さは8〜12cm、全体にボテっとした印象を与える(c)。枝葉は下垂枝の葉が開出枝の葉よりもやや短いものが多い(e)。開出枝の枝葉は、長さ2.5〜3mm、深く凹み、先端は僧坊状。茎葉は枝葉より小さく、卵状舌形で、長さ2〜2.2mm、葉縁はややササクレ、舷はない(f)。
茎葉の背面には糸状の構造があり(i, j)、腹面には偽孔も散見される(k)。茎の表皮細胞には螺旋状の肥厚があり、1〜4個の孔がある(l)。茎の横断面で表皮細胞は3層(m, w)。枝の表皮にも螺旋状の肥厚があり(m)、横断面で表皮細胞はほぼ均一の大きさ(v)。 |
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枝葉の透明細胞の様子などは、開出枝と下垂枝とでほとんど変わりがないので、ここにでは基本的に開出枝の様子だけを掲げる。
枝葉の透明細胞には、三子孔や双子孔が多数みられる。枝葉の横断面で、葉緑細胞は二等辺三角形〜台形で、底辺は腹側にあり、背側より広く開いている(s)。葉緑細胞と透明細胞の境界面は平滑。下垂枝の葉の横断面(t)でも、茎葉の横断面(u)でも同様。茎の表皮細胞の孔は以外と大きい(x)。 茎や枝の表皮細胞に細い螺旋状の肥厚があるから、ミズゴケ節 Sect. Sphagnum となる。さらに、茎葉の透明細胞は分割していないから、イボミズゴケ S. papillosum とムラサキミズゴケ S. magellanicum への分枝は排除される。残るのは、ニセオオミズゴケ S. henryense とオオミズゴケ S. palustre となる。枝葉背面の透明細胞には大きな孔がなく、透明細胞と葉緑細胞の境界に網状肥厚はみられないから、ニセオオミズゴケではない。残るのはオオミズゴケだけとなる。下垂枝の葉の透明細胞の様子が、典型的ではないが、枝や観察部位をかえると、オオミズゴケについての解説とおおむね一致する。 |
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