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[標本番号:No.553 採集日:2008/11/02 採集地:栃木県、日光市] [和名:サンカクミズゴケ 学名:Sphagnum recurvum var. brevifolium] | |||||||||||||
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11月始めに日光市加仁湯の先の湿原(alt 2040m)で出会ったミズゴケを観察した(a)。常に水に浸った場所に群生し、茎は淡黄緑色で長さ8〜12cm、枝をやや疎らにつける(b)。開出枝は水平かやや上向きに付き、下垂枝は開出枝とほぼ同長(c)。 茎は淡緑色で、表皮細胞は矩形で螺旋状肥厚や孔はなく、横断面で表皮細胞は木質部と連続的に繋がり境界は不明瞭(d, e)。枝の表皮には頸の短いレトルト細胞が2列ある。 茎葉は、枝葉より短く、長さ0.8〜1mm、正三角形で鋭く尖り、先端は軽くささくれ、葉縁の舷は広く、中央部から下部では葉幅の大部分を舷が占める(h〜j)。茎葉背面の透明細胞には糸や孔はみられない(k, l)。 |
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開出枝の葉は卵状披針形で、長さ1.2〜1.5mm、乾燥すると葉縁が軽く波打つ(i, m)。枝葉の透明細胞の端には小さな孔がみられ、背面よりも腹面に多い(n〜q)。枝葉の横断面で葉緑細胞は三角形で、背側により広く開き、腹面にはわずに出る(r)。下垂枝の横断面でも同様。 下垂枝(s)の葉(t)の背面の透明細胞には貫通する孔がみられ(u, v)、腹面の透明細胞には多くの偽孔がみられる(w, x)。また、これらの偽孔を観察するにあたっては、顕微鏡の合焦位置を変化させながらみるとより明瞭にわかる。
茎の表皮細胞に螺旋状肥厚がなく、枝葉の横断面で葉緑細胞が背側に広く開き、枝葉の透明細胞に多数の小孔はみられず、茎葉は小形であることから、ハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata の種といえる。観察結果にもとづいて、平凡社図鑑でハリミズゴケ節から種への検索表をたどるとサンカクミズゴケ S. recurvum var. brevifolium に落ちる。サンカクミズゴケについての解説を読むと、ほぼ一致する。より詳細に記された滝田(1999)の記載ともほぼ合致する。
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