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[標本番号:No.509 採集日:2008/09/02 採集地:秋田県、湯沢市] [和名:オオミズゴケ 学名:Sphagnum palustre] | ||||||||||||||||||
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9月2日に秋田県南部の秋の宮温泉郷(alt 400m)で、道路の側溝脇のジメジメした斜面にミズゴケの仲間が一面に群生していた(a, b)。植物体は黄緑色で、引き抜いてみるとあまりにも長い茎を持っているのに驚いた(c, d)。最も長い茎は45cmを超えていた。葉をつけた状態で、下垂枝は細く棒状、開出枝はややボテっとした感触があり、開出枝の方がやや長い(e, f)。 茎は淡茶褐色で、長さ25〜30cm、ややまばらに枝をつける(d, e)。茎の表皮細胞表面には螺旋状の肥厚があり、表面に1〜3個の孔がある(g)。茎の横断面で表皮細胞は3〜4層(h)。枝の表皮細胞にも螺旋状肥厚があり、表皮細胞上端に孔はあるがレトルト細胞はない(i, j)。 茎葉は楕円状舌形で、長さ1.8〜2.2mm、葉縁に舷はなく、外周には微細な歯がある(k〜m)。茎葉の透明細胞は背面でも腹面でもあまり違いがないが(n〜p)、腹面中央の上部には糸やら偽孔をもった部分がみられる(q)。 |
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開出枝の葉はボート上に深く凹み、卵形〜広卵形で、長さ2〜2.2mm、葉先は僧帽状となり、上半部背面はややざらついている。下垂枝の葉は枝の基部近くでは、開出枝の葉とほぼ同じ形状だが、枝の中ほどから先の葉は楕円状披針形で、長さ1.8〜2.4mm。 開出枝の葉の背面の透明細胞には、三子孔や双子孔が多数見られる(r, s)。腹面中央の透明細胞には偽孔や糸があり(u)、腹面上部の透明細胞には貫通する孔がある(t)。下垂枝の葉の透明細胞についても、開出枝のそれとほぼ同様。枝葉の横断面で、葉緑細胞は角の丸い台形で、底辺は腹側にある。 茎や枝の表皮細胞に螺旋状の肥厚があることから、ミズゴケ節 Sect. Sphagnum の蘚類となる。さらに枝葉の横断面で葉緑細胞は台形〜二等辺三角形で、腹側に広く開いており、透明細胞との境界部分は平滑であることから、オオミズゴケ Sphagnum palustre ということになる。平凡社その他で、オオミズゴケについての解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。 |
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