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[標本番号:No.561 採集日:2008/05/18 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:フトスズゴケ 学名:Forsstroemia neckeroides] | |||||||||||||
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東京奥多摩で採取した残置標本のうちの二つ目を観察してみた。林道脇の日当たりのよい石垣に着いていた(a)。一次茎は這い、二次茎が斜めに起き、樹状に枝を伸ばし、乾燥した枝先は上側に巻きあがっていた。二次茎の長さは5〜9cm。乾燥すると葉は茎に密着気味になるが縮むことはなく、湿るとやや展開する(b〜e)。一次茎には小さな葉がつくが、いずれも崩れていたので観察は放棄した。二次茎や枝には覆瓦状に葉が密集してつく。 二次茎の葉と枝葉とは、形はほぼ同じで大きさだけが異なる。茎葉は長さ2.5〜3mm、枝葉は1.2〜2mm、卵状〜卵状披針形で、葉頂は尖り、葉身は深く凹み、縦皺があり、基部で反曲する。葉縁はほぼ全縁だが、上部には微歯があり、中肋が葉身の2/3に達する(f, g)。 葉身細胞は、いも虫形〜長楕円形で厚膜、平滑、長さ25〜45μm(h)、葉先付近ではひし形で、長さ10〜20μm(i)。翼部の葉身細胞は長さ10μm前後の方形(j)。葉の横断面をみると中肋にステライドはない(k, l)。二次茎の横断面(m)にも枝の横断面(n)にも、中心束はなく、表皮細胞は厚膜で小さな細胞からなる。 |
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朔は見つからなかったが、苞葉に包まれた造精器ないし造卵器が、葉に隠れた状態でみえた(e, o)。手前の葉を除くと苞葉が朔を包んでいるかのような姿を現した(p)。この部分だけを取り出して、手前側の苞葉を取り除いてみた(q)。どうやら造精器のようだ(r)。この個体についていた同じ形のものをみると、いずれも造精器ばかりだった。標本の他の個体で苞葉に包まれたものを調べてみると、それらもみな造精器だけで、造卵器をつけた個体はなかった。
観察結果はイトヒバゴケ科 Cryphaeaceae を示唆している。保育社図鑑の検索表に当たってみた。同図鑑ではツルゴケ科という和名を用いている。中肋が葉頂近くに達することなく、葉身細胞背側に小乳頭もないから、スズゴケ属 Forsstroemia に落ちる。ついで属から種への検索表をたどると、スズゴケ F. trichomitria かフトスズゴケ F. neckeroides のいずれかとなる。
[修正と補足:2008.12.18 pm3:00] |
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