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[標本番号:No.569 採集日:2008/12/20 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:ホソヒラゴケ 学名:Neckera goughiana] | |||||||||||||
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奥多摩で、木漏れ日の降り注ぐ遊歩道沿いの石灰岩壁についていたコケを観察した(a)。石灰粉にまみれ乾燥して焼き海苔のような姿をしていた(b)。一次茎は岩を這い、二次茎は斜に立ち上がり、不規則に羽状に分枝する。乾燥すると枝が曲がる(c〜f)。 茎はやや硬い感じで、茎葉と枝葉とは大きさが若干違う程度で、形はほぼ同じ。茎葉は、卵形〜楕円形で、長さ1.2〜1.5mm、葉頂はやや尖り、葉縁上半には微細な歯があり、弱いく短い中肋が2本ある。葉基部の片側が内側に折れ曲がったものが多く、全体に非相称(g, h)。 葉身細胞は、葉上部〜中央部では、六角形〜楕円形で平滑、長さ15〜25μm(i, j)、葉の下部〜基部ではやや長めの細胞となり、長さ20〜30μm、翼部はあまり発達せず、方形の小さな細胞がわずかに並ぶ(k)。葉の下部横断面で中肋は2層の細胞からなり、ステライドなどはない(l)。茎の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚壁の小さな細胞からなる(l, m)。 |
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茎や枝の途中に苞葉に包まれた造卵器がついていた(m)。雌苞葉は卵形の基部から長く披針形に伸び、茎葉よりも長く、長さ1.5〜2.2mm(g, o)、雌苞葉先端や中央部の葉身細胞は、長い六角形〜楕円形で、長さ25〜40μm、葉縁には全周にわたって微歯がある。 なお、茎に毛葉や偽毛葉のような組織はみあたらない。無性芽らしきものもみあたらない。
どの属の種なのかまったく見当がつかず、平凡社や保育社の図鑑で近い属と思われるものにあたってみたが、よくわからない。表題の属名は仮のものだ。とりあえず、いくつか特徴的と思われる形質をあげてみると、以下のようなことが挙げられる。 (1) 液蘚類で、不規則羽状に平面的に分枝するこれらの形質状態から、ハイゴケ科 Hypnaceae のキャラハゴケ属 Taxiphyllum が比較的近いように思えた。しかし、同属の種についての解説を読むと、観察結果に近いようなものがみあたらない。思い違いや肝心な形質の観察を見落としている恐れもある。とりあえずはキャラハゴケ属として取り扱っておく。
[修正と補足:2008.12.26 pm8:10] |
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これらの結果は「中肋は1本で葉長の1/2に達する」と判断すべきことを物語っている。すると、ヒラゴケ科 Neckeraceae ヒラゴケ属 Neckera が最有力候補として浮かび上がる。観察結果にしたがって種への検索表をたどると、ヒメヒラゴケかホソヒラゴケだけが候補に残る。さて本標本では、二次茎が2回羽状に不規則に分枝し、葉の光沢は弱く、石灰岩生である。したがって、ホソヒラゴケと同定するのが適切といえそうだ。 適切なご指摘ありがとうございました。 |
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