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[標本番号:No.570 採集日:2008/12/20 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:ナメリオウムゴケ 学名:Gymnostomum aurantiacum] | |||||||||||||
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奥多摩の遊歩道近くの石灰岩壁下部(atl 350m)で、壁を滴り落ちる水流に沿って、石灰粉末と土砂の堆積の表面に、淡黄色の群落をなす蘚類を採集した(a, b)。ごく少量を採集したつもりが、厚い石灰粉末層と一緒に削げ落ちた。茎の下部が灰白色の粉末にまみれている(c)。 標本の一部を水没させると、再び葉が展開して野外で見たときのすがたに復元した(d, f)。乾燥すると葉が巻縮するが、管状にはならずU字状となって腹面側に湾曲する(e)。茎は直立し、下部で単軸分枝し、長さ12〜16mm、表皮細胞は、木質部と同厚かやや薄膜の細胞からなる(q, r)。茎の横断面に中心束はみられない。 |
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茎や枝の途中に苞葉に包まれた造卵器がついていた(m)。雌苞葉は卵形の基部から長く披針形に伸び、茎葉よりも長く、長さ1.5〜2.2mm(g, o)、雌苞葉先端や中央部の葉身細胞は、長い六角形〜楕円形で、長さ25〜40μm、葉縁には全周にわたって微歯がある。 葉は披針形で長さ1.8〜2.2mm、葉縁は全縁、葉の基部は透明な鞘状で、太い中肋が葉頂まで達する(g, h)。葉身細胞は、葉の多くの部分では不規則な方形〜多角形で表面には乳頭があり、長さ8〜14μm(i, l)。葉頂の細胞は矩形でやや厚膜、表面は平滑(j)。鞘部の葉身細胞は、透明で表面は平滑、長さ20〜40μm(k)。葉下部では緑色の細胞と透明の細胞の境界があるが、明瞭なV字状やU字状とはならない(m)。葉はKOHで黄色味を帯びる(i, j, n)。葉の横断面で中肋には背腹両面にステライドがある(o)。葉の基部近くでは腹側のステライドが次第になくなり(p)、鞘部の下部では背側にのみみられる(r)。
センボンゴケ科 Pottiaceae であることは間違いないと思う。はじめに保育社図鑑の検索表で属の検討をつけようと試みた。しかし、朔をつけた個体がないと、検索表をたどるのはかなり困難な作業となる。結果として、掲載されたほとんどすべての属について該当箇所を読んでみないと先に進めない。さらに掲載されている属はとても少ない。
本標本の茎の表面にはパピラがあるようには見えない。また、葉縁がわずかに反曲している葉は多い。中肋腹面と背面についての記述は、符合するともしないともいえる。しかし、他の属や種と比較すると、ナメリオウムゴケが比較的近いように思える。ただ、茎の横断面に中心束が無いという件を棚上げすれば、ハリイシバイゴケとするのが適切かもしれない。中心束の有無は安定した形質と考えて、現時点ではナメリオウムゴケとしておこう。
[修正と補足:2008.12.29] |
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