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[標本番号:No.574 採集日:2009/01/12 採集地:埼玉県、東秩父村] [和名:ヒジキゴケ 学名:Hedwigia ciliata] | |||||||||||||
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今年の1月12日、埼玉県東秩父村で明るく開けた林道で、乾いた大岩に特異な姿の白緑色の蘚類が着いていた(a〜c)。立ち上がった茎は、長さ3〜6cm、不規則に分枝し、下部は黒褐色で葉がほとんど欠落している。乾燥すると細いひも状となり、湿ると葉が展開する(c〜e)。短い側枝には苞葉に沈生するように朔をつけている(f)。 茎や枝の葉は、長さ1.8〜2.2mm、卵型で深く凹み、葉頂は微歯に覆われた透明尖となり、葉縁は全縁でわずかに反曲する(g〜j)。中肋はない。葉身細胞は丸みを帯びた方形〜楕円形で、長さ8〜20μm、幅8〜10μm、厚壁で、表面には背腹両面に大きな乳頭が2〜3個あり(k)、下部では大きな楕円形〜矩形となり、長さ20〜60μm(l)。基部の大形細胞には乳頭はなく平滑。 |
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葉の横断面をみると(m)、背腹の厚壁の表面に金平糖の一部のような乳頭があることがよくわかる(n)。茎の横断面に中心束はなく、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(o)。 雌苞葉は枝葉より細身で大きく、長さ3〜4mm、広い披針形〜長卵形で、葉先から上半部の縁からは透明な繊毛状の毛が多数でている(q, r)。 |
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雌苞葉の葉身細胞は、葉の上半では枝葉のものとほぼ同じだが(s, t)、葉の中ほどから下部にかけての細胞は枝葉の細胞より大きく、基部では大きな矩形の細胞が顕著だ(u)。なお画像(s)は乳頭部に合焦、画像(t)は細胞輪郭部に合焦したものだ。雌苞葉上半の縁から延びる毛は多細胞列となっている(v)。 標本には多数の朔がついていたが、いずれも未成熟であり、蓋と朔本体とを分離することも、口環の有無を確認することもできなかった。蓋に中央部がわずかに突出する。朔柄は非常に短く雌苞葉に沈埋し(w)、蓋と朔本体の境界部は明瞭に色が違っていた(x)。
他に類似の蘚類がない特異な形態から、ヒジキゴケ科 Hedwigiaceae ヒジキゴケ属 Hedwigia の蘚類だろう。いくつか変種が知られているようだが、平凡社図鑑では日本産1種とされる。ヒジキゴケ H. ciliata としてよいと思う。学名の種形容語 ciliatum は「繊毛状の」という意味だが、これは雌苞葉上半縁の毛から命名されたものだろう。 |
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