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[標本番号:No.586 採集日:2009/02/07 採集地:静岡県、河津町] [和名:チジミバコブゴケ 学名:Onchophorus crispifolius] | |||||||||||||
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伊豆半島の旧天城トンネル近くの沢(alt 640m)の斜面で、地衣に覆われた岩に丸いかたまりを作っていた蘚類を観察した(a, b)。茎は長さ3〜8mm、標本は乾燥してすっかり巻縮していたが(c)、水没させると元に戻った(d)。葉は長卵形の鞘部から線状披針形に伸び、長さ2.5〜4mm、下部で弱く半曲し、上部の縁には目立たない小さな歯がある。中肋は葉頂近くに達する(e〜g)。 葉の大部分の葉身細胞は、類円形から方形で、長さ6〜10μm、厚壁で表面は平滑(h)。鞘部の葉身細胞は大きな矩形で、長さ20〜30μm、薄膜(i)、葉先では、長さ10〜20の細胞が並ぶ(j)。葉の横断面で、中肋には中央に明瞭なガイドセルがあり、背腹両面にステライドがある(k)。茎の横断面には中心束がある(l)。 |
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標本には、若く未成熟な朔(m)ばかりではなく、胞子をほとんど放出してしまった古い朔(n)の両者がついていた。未成熟な朔はまだ柄に直立しているが、古い朔は傾き非相称で、両者ともに下部の下側に明瞭なこぶ状のふくらみがある。若い朔の帽は朔本体をすっかり覆うほどの長さがある。朔歯は一列、赤褐色で16枚からなり、朔歯の先端は微細なイボに覆われ、深く二裂し、顕著な縦条がある(o〜r)。胞子はすっかり失われていた。 シッポゴケ科 Dicranaceae の検索表をたどるとコブゴケ属 Onchophorus に落ちる。属から種への検索表をたどると、チジミバコブゴケ O. crispifolius に落ちる。種の解説をよむと、「葉身部はふつう2細胞層」という部分は異なるが、ほかの形質状態は観察結果とほぼ一致する。念のために、多くの葉の横断面を切り出してみたところ、ごく一部に葉身部が2細胞のものをみることができたが、大部分の葉では1細胞層だった。 |
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