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[標本番号:No.591 採集日:2009/02/07 採集地:静岡県、河津町] [和名:ハネヒツジゴケ 学名:Brachythecium plumosum] | |||||||||||||
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2月7日の伊豆旧天城トンネル近くの林道脇の岸壁(alt 630m)で、フトリュウビゴケ(標本No.590)に混じって小さな蘚類が朔をつけていた(a, b)。フトリュウビゴケを採集するときに混生していることに気づいて、小さな群れを一つ持ち帰っていた。2月7日に採取した最後のひとつだ。
一次茎は岩をはい、不規則に密に分枝し、各枝は斜上しわずかに小枝をだす。葉を含めた枝の幅は1.5〜2.5mm、枝の長さは1〜3cm。湿ると枝葉は展開するが、茎葉はほとんど変化なく、全体として乾湿で姿にあまり変化はない(c, d)。 一次茎の葉はほとんど崩れているので、斜上する二次茎の葉を観察した。茎葉は披針形〜卵状披針形で、長さ2〜2.5m、葉先は鋭く、葉縁には小さな歯がある(e〜g)。中肋は一本で葉長の1/2〜3/4に達する。枝葉は茎葉より小さく、長さ1.5〜2mm、葉縁には歯がある。 茎葉の葉身細胞は線形で、長さ55〜75μm、幅4〜5μm、平滑で(h)、翼部は未発達で明瞭には分化せず、幅広で短い矩形の細胞が並ぶ(i)。茎葉の横断面で中肋にはガイドセルやステライドはない(j, k)。枝葉の葉身細胞は茎葉のそれとほぼ同様。茎の横断面には中心束がある(l)。 |
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苞葉は卵形の鞘部から急に細くなって反曲し長く伸び、長さ1.2〜2mm(m, n)。苞葉の葉身細胞は、中央部から先で長楕円形〜線形で、長さ60〜90μm、幅6〜10μm(o)、基部では短く幅広の矩形〜楕円形となる(p)。中肋の有無などははっきりしない。 胞子体は長さ2〜2.5cm、朔は僧帽形の帽をかぶるが(b)、標本では帽はほとんど落ちていた。朔は卵形で傾いてつき、非相称。蓋は円錐形で、先端は嘴状に尖る。蓋を外すと、外朔歯が一気に反り返った(r)。朔は二重で、それぞれ16枚(s)。詳細に観察するため外朔歯と内朔歯を分離した(t, u)。口環がよく発達している。 外朔歯は披針形で、先端から上部には表面に微細なイボがあり、中央から下部では横条が発達している。外朔歯の中央には縦にジグザグ状に亀裂がある(v〜x)。外朔歯に上から圧力を加えると縦の亀裂の部分で二つに割れた。 |
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内朔歯は高い基礎膜をもつ(u)。内朔歯先端の歯突起と間毛には微細なイボがあり(y)、歯突起の基部や基礎膜の部分には横に顕著な隆起があり、表面は微細なイボに覆われる(z, aa)。基礎膜上部間毛の基部付近の姿は興味深い。 朔柄は表面上部には微細なイボがあり、中央から下部は平滑(ab, ac)。柄上部の横断面をみると微イボの様子がわかる(ad)。朔の基部には気孔がある(ae, af)。朔の横断面をみると、大形でやや厚壁の外表皮と、薄膜の内表皮が明瞭に分解している(ah ,ai。胞子は球形で、径12〜18μm(aj)。
アオギヌゴケ科の蘚類だろう。平凡社図鑑の属への検索表をたどってみた。観察結果に基づいて素直にたどると、アオギヌゴケ属 Brachythecium に落ちる。ついで、種への検索表をたどると、ハネヒツジゴケ B. plumosum となる。種の解説を読むと、観察結果とおおむね一致するが、葉の形などは解説の記述よりも幅広である。「ノート」に「変異が著しく、多くの変種が記載されている」とあるから、広義のハネヒツジゴケとしてよいのではないかと思う。 |
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