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[標本番号:No.608 採集日:2009/03/14 採集地:三重県、大紀町] [和名:シナチジレゴケ 学名:Ptycomitrium gardneri] | |||||||||||||
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3月14日三重県大紀町で、日向の石灰岩上に、多数の朔をつけたチジレゴケ属 Ptycomitrium の蘚類が濃緑色の丸いかたまりを作っていた(a〜c)。ルーペで見てシナチジレゴケ P. gardneri だろうと思ったが、念のために採集してチェックしてみることにした。 乾燥すると葉が巻縮して内曲する(e)。茎は基部でつながり、高さ3〜5cm、あまり分枝せず、葉を密につける。葉は長卵形〜楕円形の基部から線状披針形に伸び、長さ3〜6mm、葉頂は鋭頭で、葉縁の上半部には4〜8細胞からなる歯がある(f, m)。中肋は葉頂に達する(g, h)。 葉身細胞は、葉の上部から中央部では丸みを帯びた方形で、長さ(内腔)6〜12μm、膜は厚く(i)、葉の下部では矩形で、長さ10〜25μm、幅6〜10μm(j)、さらに下部では長さ50μmに及びいずれも厚膜(k)。翼部がよく発達し、葉身細胞は薄膜褐色の楕円形〜矩形(l)。 |
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葉の上部から下部までの横断面を切り出してみた(o〜q)。葉の上部では葉身細胞は2層をなし、中央から下部では1層となっている。中肋には顕著なガイドセルがあり、背腹両面にステライドが発達している。茎の横断面には弱い中心束がある(r)。 |
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朔柄は黄色〜明橙色で、長さ6〜10mm、表面は平滑。朔は直立し、相称で長卵形、長い嘴のある蓋をもつ。帽は鐘状で、朔の2/3ほどを覆う(s, t)。朔歯は赤色で一重、16枚からなり、それぞれは披針形で、基部近くまで二裂し、表面は微細な乳頭に覆われる(u〜z)。口環の有無はよくわからない。朔の基部には気孔がある(ab)。胞子は球形で、径10〜12μm。 シナチジレゴケに間違いなさそうだ。念のためにいくつかの図鑑の解説にあたってみたが、観察結果とほぼ一致する。シナチジレゴケは過去にも2度、ていねいに観察しているが、今回は顕微鏡画像を少し多めに取り上げた。 |
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