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[標本番号:No.609 採集日:2009/03/14 採集地:三重県、大紀町] [和名:ムチゴケ 学名:Bazzania pompeana] | |||||||||||||
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3月14日三重県大紀町の石灰岩地帯で、杉の根元や岩にムチゴケ属の苔類が大きな厚いマットを作っていた(a)。花被や朔をつけた個体はなかったが、久しぶりに苔類を持ち帰った。茎は長いものでは10cmを越えていた。葉を倒瓦状につけ、枝を二叉状に分け、腹面には透明な腹葉があり、随所から鞭を長く伸ばしている(c〜f)。鞭には小さな葉がまばらにつく(g)。 葉は重なり合ってつき、舌形で先端には三つの大きな歯牙があり、長さ2.5〜3mm、基部の幅は1〜1.3mm(h, i)。葉身細胞はやや厚膜の六角形で、葉の中央部では長さ25〜35μm、基部では30〜45μm、葉先では小さい(j〜l)。油体は紡錘形で各細胞に6〜10ある。腹葉や鞭の葉が透明なので、今日は趣向を変えて、サフラニンで染色して撮影した。 |
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腹葉は茎に倒伏する形で接在し(f)、四角形で上縁は3〜5裂し、重鋸歯状となり側面にも歯があり、長さ0.6〜0.8mm(h, i, m)。腹葉の葉身細胞は、基部の一部を除き透明、厚膜の多角形、長さ25〜30μm(n)。鞭の葉は半円形〜四角形で、葉先には歯牙があり、長さ0.2mm前後、葉身細胞は透明な多角形(o)。茎や鞭の横断面で、表皮細胞がやや分化している(p, r)。 葉を倒瓦状につけ、茎は二叉状に分枝し、茎の腹面から長い鞭をだし、葉先が三裂し、側葉より著しく小さな腹葉をもつことから、ムチゴケ属 Bazzania の苔類に間違いない。保育社図鑑の検索表をたどると、すなおにムチゴケ B. pompeana に落ちる。 |
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