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[標本番号:No.623 採集日:2009/04/11 採集地:千葉県、君津市] [和名:フタバネゼニゴケ 学名:Marchantia paleacea ssp. diptera] | |||||||||||||
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先週土曜日(4/11)千葉県君津市の城跡にカシタケなどを採取に出かけた。遊歩道両側の壁には、雌器托や雄器托を多数つけたフタバネゼニゴケ Marchantia paleacea ssp. diptera が多数みられた。雌器托は不稔のものばかりだったが、雄器托の上面には白色の混濁液が放出された状態のものが目立ったので(l, m)、持ち帰った。 |
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雄器床の裏面にも、葉状体裏面と同様に、紫色の腹鱗片が放射状に重なり合ってついている。先端に付属物を伴った腹鱗片もある。その腹鱗片からは有紋型の仮根がでる。雄器床を横断面で切ると、白色の精子塊が吹き出してきた(q, r)。断面には造精器で生産された精子が吹き出すための通路が確保されている(s)。 精子は非常に小さく、長い尾をもっている。尾は2本あるようにみえるがはっきりしない。最初水で封入してみたが、コントラストが弱くてはっきりしない(t)。そこで、フロキシンを加えると尾の部分が染色された(u)。なぜか、多くの精子で、尾が類円形に丸まっている。カバーグラスで潰れないようホールグラスを使って観察したが、尾を動かしている様子は把握できなかった。 広島大学の嶋村氏がジャゴケの精子放出の様子を動画撮影をしているので、フタバネゼニゴケでも類似の方法で精子の放出を確認できないか試みた。すでに造精器は十分成熟していると考えられる。雄器托をつけた雄株をシャーレにいれて、霧吹きでたっぷり湿らせてから蓋をした。ジャゴケでは数分後には雄器床から精子が吹き出して、シャーレの蓋に乳白色のスポットが生じるという。しかし、今回採集したフタバネゼニゴケでは、雄器床の表面に多数の乳白色の液が次々と滲み出してきたが、空中に放出される気配はなく、シャーレの蓋に乳白色のスポットはできなかった。 ジャゴケの雄器托は葉状体に貼り付いたようなイボ状にできる。それに対して、フタバネゼニゴケの雄器托には柄があって、雄器床は葉状体面からはずっと高い位置にある。それと空中放出しないことに何か関連があるのだろうか。あるいは、条件によってはジャゴケ同様に空中放出するのだろうか。 |
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