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[標本番号:No.626   採集日:2009/04/19   採集地:茨城県、石岡市]
[和名:チジミバコブゴケ   学名:Onchophorus crispifolius]
 
2009年4月23日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a, b) 転石についた植物体、(c) 採取標本:乾燥時、(d) 採取標本:湿時、(e, f) 葉、(g) 葉の先端部、(h) 葉上半部の葉身細胞、(i) 葉中央部の葉身細胞、(j) 葉の鞘部の葉身細胞、(k) 葉の横断面、(l) 茎の横断面

 今週の日曜日、筑波山の林道を走った。その折に数点のコケを採集した。今日はそのうちのひとつ、半日陰地の路傍の石についた蘚類を観察した(alt 200m)。多数の朔には未成熟なものから成熟したものまであり、いずれも朔の基部下側に大きなこぶ状の隆起があった(n)。
 チジミバコブゴケ Onchophorus crispifolius だろうと思ったが、念のために採集してきた。あらためて確認した結果は予測どおりだった。過去に何度か出会っているので、詳細な記述はせずに写真を主体にアップすることにした。
 葉を上部から下部にわたって、横断面を何ヶ所かで切り出した(k)。中肋の横断面には明瞭なガイドセルがあり、背側にも腹側にもステライドがある。葉身細胞には2層になった部分があり、葉上部の葉身細胞には丸みを帯びた乳頭もみられる。茎の横断面には中心束がある。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 胞子体、(n) 朔、(o) 朔歯、(p) 朔歯:外側、(q) 朔歯:内側、(r) 朔歯:外側基部、(s) 朔歯:外側中央部、(t) 朔歯:外側上部、(u) 朔歯:内側基部、(v) 胞子、(w) 朔の横断面、(x) 気孔

 朔柄の長さにはかなりのバラつきがあり、長いものと短いものでは倍ほども違う(m)。朔歯は一重で16枚(o)、それぞれは披針形で先端は2裂している。朔歯は表側と裏側とではやや違った表面模様を見せてくれる。表側では横帯状のパーツには細かな縦条が明瞭だが(r, s)、裏側では幅広の横隆起に微細な乳頭がみられ、細かな縦条はない(u)。胞子は13〜18μm(v)。図鑑などに「(朔は)中部以下に縦の細条がある」と記されるのは外側の面を指しているようだ。