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[標本番号:No.640 採集日:2009/05/04 採集地:福島県、棚倉町] [和名:タチヒダゴケ 学名:Orthotrichum consobrinum] | |||||||||||||
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ゴールデンウイークの5月4日、福島県の山の中を通る林道脇で(alt 480m)樹幹についたコケを採集した(a, b)。広葉樹の樹幹に丸みを帯びた小さな塊を作っていた。茎は短く、長さ5〜10mm、乾燥すると葉は縮れることなく茎に密着し、湿気を帯びると葉は直ちに展開する(c〜e)。 葉は披針形〜楕円形で、長さ2〜2.5mm、下半部で幅広く、中肋を境に竜骨状となり、先端はやや尖り、葉縁は全縁でわずかに狭く半曲する(f, g)。中肋は強壮で葉頂に達する。葉身細胞は、丸みを帯びた多角形で、長さ8〜10μm、厚膜で表面に1〜2個の乳頭がある。翼部はあまり発達せず、やや大きめで矩形の細胞が並ぶ(i)。 葉の横断面で、中肋にはステライドがなく、葉身細胞の表面の小突起がよく分かる(k)。茎には中心束はなく、表皮はやや薄膜で小さな細胞からなる(l)。 |
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朔は立ち、相称、長さ1.2〜1.5mm、乾燥すると顕著な縦しわが現れる(c, m)。帽は釣鐘形で表面に毛はなく、朔を深くおおう。蓋には短く細い突起がある(m, n)。朔柄は短く0.5mm以下。朔は二重で、外朔歯は披針形で16枚。外朔歯は、それぞれ2枚ずつ対をなし(p, r)、まるで幅広い外朔歯が8枚あるようにしかみえない(m, o)。内朔歯は基礎膜がほとんど無く、細い紐ないし糸状の歯突起が、対をなした外朔歯の間から延び、歯突起は計8本ある(o)。内外ともに朔歯の表面は微イボでおおわれる。 胞子は球形で、径12〜18μm(t)、表面は微細イボにおおわれるが(v)、エタノールで封入すると微イボは不鮮明となりよくわからない(u)。朔の気孔は沈生で、朔の基部には少なく、中央部に多くみられる(w, x)。
先端の尖った竜骨状ヘラ形の葉、丸く多角形の葉身細胞、強く葉先に達する中肋、対をなす外朔歯、糸状の内朔歯、樹幹に小群落をなす、などからタチヒダゴケ科 Orthotrichaceae の蘚類に間違いない。樹幹に生育し、茎は立ち、乾燥すると葉が茎に密着し、朔の帽は釣鐘状、朔の気孔は沈生、葉身細胞表面に微細なイボがあることから、タチヒダゴケ属 Orthotrichum の蘚類だろう。平凡社図鑑によると、日本産8種とあり、タチヒダゴケ科ではもっとも大きな属らしい。 |
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