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[標本番号:No.639 採集日:2009/05/04 採集地:栃木県、那須塩原市] [和名:チャツボミゴケ 学名:Jungermannia vulcanicola] | |||||||||||||
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栃木県那須温泉には、廃業して施設が老朽化したまま放置された宿がいくつもある。その一つ(alt 1000m)で、破れた給湯管から、間欠的に硫黄泉が噴き出す一角があった。数分ごとに熱湯が噴き出すのであたりは硫黄の臭気が漂い、常に濡れた状態となっている。 給湯管から流出する水で浸った石垣に濃緑色の苔類が群生していた(a, b)。あたりは熱気で蒸し蒸しするように気温と湿度が高い。熱湯の噴き出す合間にコケを撮影し、一部を採集した。植物体は、長さ1〜3cm、背片のみで腹片はなく、瓦状に葉をつけ、腹葉はない(c, d)。茎の上半は斜上する。枝の分岐の仕方は、襟をもち茎の側面から出る典型的なハネゴケ型。 葉は接在し、横から茎に斜めにつき、長さ0.8〜1mm、幅と長さはほぼ同じ、腎臓型で全縁。腹面には仮根がやや疎についている(e〜h)。葉身細胞は六角形で、長さ30〜50μm、トリゴンはなく、顆粒状で紡錘形の油体が0〜4個含まれ、細胞表面は平滑。多くの油体には中央に一つの大きな眼点がある(i〜l)。無性芽はない。花被をつけた個体は無かった。
ツボミゴケ属 Jungermannia の苔類には間違いなさそうだ。花被をつけた個体がひとつも無かったので、平凡社図鑑の検索表を素直にそのままたどることはできない。排除法で可能性の低いものを捨てていくと、チャツボミゴケ J. vulcanicola が有力な候補としてのこる。発生環境、油体の眼点細胞などは、チャツボミゴケを支持している。保育社図鑑にある種の解説は、観察結果とほぼ一致する。 |
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