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[標本番号:No.655   採集日:2009/06/09   採集地:千葉県、君津市]
[和名:ハイゴケ   学名:Hypnum plumaeforme]
 
2009年6月11日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 朔をつけた植物体、(b) 採取標本、(c) 茎葉と枝葉、(d) 枝葉中央の葉身細胞、(e) 枝葉基部の葉身細胞、(f) 茎の横断面、(g) 雌苞葉:若い葉、(h) 同前:老葉、(i) 雌苞葉:左側が内側 、(j) 雌苞葉の葉身細胞:若い葉、(k) 同前:老葉、(l) 雌苞葉の基部

 先日きのこ採取で千葉県房総半島に出向いた折に、城趾公園の斜面で朔をつけたハイゴケ Hypnum plumaeforme にであった。胞子体をつけたハイゴケに出会ったのは初めてだったので、採取することにした。ここでは、雌苞葉と胞子体の観察を主眼にしたので、配偶体については、同定に必要な最低限の写真を掲げた(c〜f)。茎の横断面で、表皮細胞は厚膜で小形、茎葉や枝葉は広卵形の基部から披針形に伸び、上半部は強く鎌形に曲がる。中肋は二叉して短い。葉身細胞は線形で、長さ40〜60μm、翼部の方形細胞は少ない。
 雌苞葉には深い縦しわがあり、内側の葉は小さく、外側の葉は大きく、長さ1.5〜3.5mm、広卵形〜卵形の基部から披針形に延びる(i)。葉身細胞は線形で、長さ60〜100μm、基部では幅広くなり長さも40〜60μmと短い(j〜l)。古い雌苞葉の葉身細胞はやや厚膜となっている。
 
 
 
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(m) 朔と朔柄、(n) 朔の帽と蓋、(o) 朔歯の開閉、(p) 口環を取り外す、(q) 口環、(r) 外朔歯と内朔歯、(s) 外朔歯、(t) 内朔歯、(u) 内朔歯:KOHで封入、(v, w) 気孔、(x) 胞子

 朔柄は長さ3〜4cm、赤褐色で表面は平滑。朔は大きく湾曲し、非相称で、水平から下向きにつく(m)。帽は僧帽形で、蓋は円錐形で先端は尖らない(n)。朔は二重で、それぞれ16枚、内朔歯と外朔歯はほぼ同長(r)。口環がよく発達している(p, q)。
 外朔歯は披針形で先端は鋭く尖り、先端部には細かな乳頭が、下部には横条がある(s)。内朔歯は高い基礎膜をもち、歯突起の間からは数本の間毛が延びている。外朔歯も内朔歯も、KOHで封入すると赤みを帯びる(u)。朔の下部には気孔がある(v, w)。胞子は球形で、径12〜18μm。

 保育社図鑑によれば、ハイゴケは雌雄異株であまり朔をつけないとされる。これまで、ハイゴケをみると朔をつけた個体がないか常に注視してきた。初めて朔をつけた群れにであったわけだが、朔のほとんどは既に最盛期を過ぎていた。たったひとつだけ、帽を蓋をつけた朔があった。口環がよく発達していて、実体鏡の下で、ピンセットでつまんで取り外すことができた。朔歯の大部分は内外とも先端部が欠損したり、壊れていた。たったひとつだけ、先端までそろった朔歯をつけた朔があった。どうやら朔をつけるのは6月より前の頃なのだろう。