[標本番号:No.670 採集日:2009/07/11 採集地:栃木県、日光市] [和名:ウスベニミズゴケ 学名:Sphagnum capillifolium var. tenellum]
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2009年7月20日(月) |
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(a) 湿地全景、(b) 植物体、(c, e) 乾燥標本、(d, f) 水で戻した標本、(g) 茎の表皮、(h) 茎の横断面、(i) 茎葉と枝葉、(j) 茎葉、(k) 茎葉腹面上部、(l) 茎葉背面上部 |
栃木県日光市のスキー場脇の湿地(a)で何種類かのミズゴケが見られた(alt 1400m)。そのうちの一つ、紫紅色の繊細なミズゴケを観察した(b)。高層湿原のやや凸状になった部分に生じ、紅色〜紫紅色に着色し、茎の長さ6〜10cm、枝をやや疎につける(c, d)。開出枝に比較して下垂枝がやや長めで、枝葉の先端がわずかに反り返っみえる部分がある(e, f, x)。
茎の表皮細胞は長方形で表面に孔はなく平滑であり(g)、横断面で表皮細胞は3〜4層。茎葉は先端がやや尖った舌型で、長さ1.1〜1.3mm。上部の舷は幅狭く、中央部から基部では広がり、基部では葉幅の1/3〜1/2に及ぶ(j)。茎葉背面の透明細胞には膜壁があり、上部には偽孔もある(k)。一方、茎葉腹面の透明細胞には膜壁の他に糸や偽孔がある(l)。
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(m) |
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(o) |
(p) |
(q) |
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(s) |
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(u) |
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(w) |
(x) |
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(m, n) 枝の表皮、(o) 枝の横断面、(p) 枝葉、(q) 枝葉背面上部、(r) 枝葉背面中央、(s) 枝葉腹面上部、(t) 枝葉腹面中央、(u, v) 枝葉の横断面、(w) 紫色の強い群、(x) 開出枝と下垂枝 |
枝の表皮細胞には、首の長いレトルト細胞が2〜3列に並ぶ(m〜o)。枝葉は卵状披針形で、長さ0.8〜1.0mm(i, p)、先端にはわずかに歯がある。枝葉背面の透明細胞には、やや膜の厚い貫通しない三子孔や双子孔があり、葉先や縁近くでは、貫通する双子孔がある(q, r)。腹面の透明細胞には、上部には偽孔があるが、葉身の大部分には孔はない(s, t)。枝葉の横断面で、葉緑細胞は背腹両面に開き、腹面側により広く開く(u, v)。
茎や枝の表皮細胞に螺旋状肥厚はなく、葉の横断面で葉緑細胞が腹側に広く開き、枝葉は乾いても縁が波打つことないのでスギバミズゴケ節 Sect. Acutifoila のミズゴケに間違いない。観察結果に基づいて、平凡社の検索表にあたると、ウスベニミズゴケ S. capillifolium var. tenellum、あるいは、ヒナミズゴケ Sphagnum warnstorfii に落ちる。
ウスベニミズゴケでは、枝葉やまばらに付き、先端はわずかに反り返り、茎葉の透明細胞の腹面に糸がなく背面に糸があるとされる。いっぽう、ヒナミズゴケでは、枝葉は密に付き、先端部は反り返らず、茎葉の透明細胞には膜壁はあるが糸と孔はないとされる。そこだけ考慮すれば、ウスベニミズゴケとなる。
一方、ヒナミズゴケには、枝葉背面上部の透明細胞に、縁が厚くてリング状の孔があるという。そこだけ見ると、ヒナミズゴケとも考えられる。枝葉背面上部のリング状の孔に重みを置けばヒナミズゴケとなるが、ここでは、茎葉の透明細胞の特徴の方に重みを置いて判断し、ウスベニミズゴケと考えた。
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