HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.704 採集日:2009/08/02 採集地:福島県、福島市] [和名:アオモリミズゴケ 学名:Sphagnum recurvum] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
8月2日に土湯峠近くの湿原(alt 1200m)で、茎のやや硬い中形のミズゴケを採集した(a, b)。乾燥すると枝葉の縁が波打つ(i)。開出枝には葉が5列に並ぶ。葉の一部に色をつけて一枚ずつ外していくと、葉が螺旋状に5列に並ぶことが確認できた(h)。枝を外してみると、茎葉が正三角形に近い姿をしていた(j)。茎は長さ8〜12cm、淡黄褐色〜淡黄緑色(c, d)、茎の表皮細胞は長方形で孔はない(k)。茎の横断面で表皮細胞は木質部との境界は不明瞭(l)。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
枝にはレトルト細胞が2〜4列に並び、首は短い(m, n)。茎葉は長さ1mm前後で、葉頂はわずかに総状に裂ける(o, p)。開出枝の葉は、長さ1.2〜1.6mm、卵状披針形。下垂枝の葉は、長さ0.8〜1.2mm、広卵状披針形〜卵状披針形(r)。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
一部の茎葉には葉先が尖ったものがみられるが、多くの茎葉の葉先はわずかに総状に裂けている(s)。茎葉先端の透明細胞には破られたり引き裂かれたような孔がある(t)。茎葉の葉先近くまで舷が発達し、中央から下部では大きく広がっている。 開出枝の葉の透明細胞背面には、先端に貫通する孔があり(w, x)、透明細胞腹面上部にも貫通する孔があるが(y)、腹面中央から下部の透明細胞では、その部分に偽孔が見られる(z)。下垂枝の葉背面の透明細胞の先端には、開出枝の葉のそれと比較してやや大きめの貫通する孔がある(aa)。下垂枝の葉腹面の透明細胞には偽孔がある(ab)。開出枝でも下垂枝でも、葉の横断面で、葉緑細胞は背側に広く開き、腹面にも達している。
当初サンカクミズゴケ Sphagnum recurvum var. brevifolium ではあるまいかと思った。しかし、茎葉の先端がわずかに総状に裂けたものが多いこと、枝葉の横断面で葉緑細胞が背腹両面にでていることなどから、アオモリミズゴケ S. recurvum とするのが妥当と判断した。当初、下垂枝の葉腹面中央の透明細胞に貫通する孔は少なく偽孔がみられるので、サンカクミズゴケを感じさせられた。そういう先入観を持って茎葉を見ると、あちこちに先端が尖った茎葉が見つかった。しかし、多くの茎葉では先端はわずかに総状に裂けていた。 |
|||||||||||||