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[標本番号:No.714 採集日:2009/08/24 採集地:新潟県、糸魚川市] [和名:ワタミズゴケ 学名:Sphagnum tenellum] | |||||||||||||
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先月24日に新潟県の蓮華温泉から北アルプス北部の山に登った。その途中、標高1720mあたりの道脇に小さな湿原があった(a)。モウセンゴケに混じって何種類かのミズゴケがでていた。今日は、そのうちから背丈の小さい繊細なミズゴケを観察した(b, c)。 茎は長さ2〜4cm、明緑色〜明緑褐色で(d)、表皮細胞は矩形で孔はなく(o)、横断面で表皮細胞は1〜3層で木質部とは明瞭な区画をなしている(p)。下垂枝と開出枝の区別をできない枝が多く、下垂枝を持たないものもある(e)。茎には葉が密生している(f)。 茎葉は長さ0.8〜1.0mm、舌形で上半の縁は腹側に強く巻き込み、ちょっと見た目には鋭頭にみえるが(f)、頭部は円頭。茎葉の縁には狭い舷があり、下部ではやや広がっている(g〜i)。茎葉の透明細胞には、背腹ともに糸があり背側には偽孔も目立つ(j〜m)。茎葉の横断面で葉緑細胞は三角形で、背側に広く開く(n)。 |
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枝の表皮には首の長いレトルト細胞が2〜3列に並ぶ(q, r)。枝葉は長さ0.6〜0.9mm、広卵状披針形で深く凹む(s)。枝葉の透明細胞には、背面には多くの偽孔がみられるが、腹面には少ないかほとんどない(t〜w)。枝葉の横断面で葉緑細胞は三角形で背面側により広く開く(x)。
茎や枝の表皮細胞に螺旋状肥厚はなく、葉の横断面で葉緑細胞が背側に広く開き、枝葉の透明細胞に多数の孔がなく、小さな茎葉をもつことから、ハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata に間違いない。この節の種で、首の長いレトルト細胞をもつのはワタミズゴケ Sphagnum tenellum しか知られていない。ワタミズゴケについての解説を滝田(1999)や Crum, H. A. & L. E. Anderson(Vol.1 1981)などで確認すると観察結果とおおむね一致する。 |
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