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[標本番号:No.715 採集日:2009/08/24 採集地:新潟県、糸魚川市] [和名:アオモリミズゴケ 学名:Sphagnum recurvum] | |||||||||||||
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新潟県糸魚川市の蓮華温泉近く登山道脇の湿地で採集したハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata の種と思われるミズゴケを観察した。現地でルーペでみた感触からと、乾燥すると葉が波打つことなどから、アオモリミズゴケSphagnum recurvum かその変種あたりだろうとあたりをつけていた。GPSの表示する標高は1720mとなっていた。 採集したは極端に大きさの違う二通りのタイプがあった(c, d)。小さいタイプでは、茎は4〜6cm、枝のない個体もあった(c)。大きいタイプでは、茎葉6〜10cm。両者は同じ群の端と中間に位置していた。結果としては両者は同一種と思われた。写真は、大きい方のタイプで代表した。 茎の表皮細胞は長方形で孔はなく、横断面で表皮細胞と木質部とは連続的に変化し、明瞭な境界は見られない(g, h)。枝にはレトルト細胞が3〜4列に並ぶ(i, j)。 茎葉は長さ0.6〜0.8mm、卵状三角形で、先端部はわずかに総状に裂けている(k〜n)。茎葉先端近くの透明細胞には破れたような貫通する孔がある。上部の透明細胞の一部には糸がみられる(n)。狭い舷が先端近くまで達し、中央から下部では大きく広がっている。 |
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開出枝の葉は卵状披針形で、長さ1.1〜1.3mm、透明細胞には背腹ともに貫通する孔がある。下垂枝は長さ0.9〜1.2mで、開出枝の葉とほぼ同じ形をし、背面の透明細胞の先端にやや大きめの貫通する孔がある。枝葉の横断面で、葉緑細胞は三角形で、背面側に大きく開き、腹面側にも達している(aa, ab)。 |
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茎の表皮細胞に螺旋状肥厚がなく、枝葉の先端は狭く鋭頭、枝葉の透明細胞背側には接合面に小孔が並ぶことはなく、枝葉横断面で葉緑細胞の底辺が背面側にあり、茎葉は小さく舷が下方で広がっていることから、ハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata の種となる。 平凡社図鑑でハリミズゴケ節から種への検索表をたどると、枝のレトルト細胞の首は短く、茎葉は小さな卵状正三角形で、茎葉先端の透明細胞には貫通する孔があり、下垂枝の葉の透明細胞先端には背腹両面に貫通する大きな孔があるから、アオモリミズゴケかコサンカクミズゴケ S. recurvum var. tenue が候補に残る。 この両者では、下垂枝の葉背面の透明細胞に見られる孔の大きさがかなり違うとされる。観察結果を図鑑の検索表にてらすと、アオモリミズゴケとなる。滝田(1999)で両者についての解説を読むと、アオモリミズゴケとするのが妥当と思われる。 アオモリミズゴケやコサンカクミズゴケは、これまでにも何度も観察覚書を記しているのだが、今回は新潟県で採取したこともあってアップしておくことにした。 |
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