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[標本番号:No.718   採集日:2009/08/25   採集地:新潟県、妙高市]
[和名:フソウツキヌキゴケ   学名:Calypogeia japonica]
 
2009年9月17日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 混成する植物体、(b, c) 背面、(d, e) 腹面、(f) 葉、(g) 葉身細胞、(h) 油体、(i) 茎の横断面、(j) 腹葉、(k) 立ち上がった鞭枝、(l) 鞭枝の先端の無性芽

 新潟県の妙高高原(alt 1260m)で、砂質の岸壁に3種ほどのコケがついていた(a)。葉状体の苔類直立する蘚類、そして茎葉体の苔類(b〜e)だった。ここでは、ツキヌキゴケ科と思われる茎葉体の苔類を観察した。
 茎は長さ1〜2cm、葉を含めた茎の幅は2〜3mm、葉は倒瓦状に重なり、半円形〜広舌形、円頭。縁がわずかに二裂する葉もある。葉縁基部がやや下延する。腹葉は茎径の1.5〜2倍、葉長の1/2まで二裂し、葉縁はほぼ全縁。腹葉の葉縁基部はわずかに下延する。腹葉の基部からは仮根が束になって出る。葉身細胞は五〜六角形で、トリゴンはなく、薄壁で、表面は平滑〜わずかに凸状。眼点を持った油体が、各細胞に2〜4つある。茎の横断面で、中心束はなく、表皮細胞も分化しない。
 這う茎の途中から、随所に鞭枝状に立ち上がった茎が多数見られる。この部分にも幅の狭い葉と腹葉があり、茎の先端は粉状にみえる(a, k)。粉状の部分は風船のような細胞が連なる(l)。これは無性芽のようだ。

 平凡社図鑑の検索表をたどると、ツキヌキゴケ属 Calypogeia に落ちる。次いで種への検索表をたどると、フソウツキヌキゴケ C. japonica に落ちる。種の解説を読むと、観察結果とほぼ一致する。平凡社図鑑の種の解説には無性芽のことについて触れていないが、保育社図鑑(ツクシホラゴケモドキとして掲載)には、鞭枝に多数の無性芽がつくことに触れている。