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[標本番号:No.726 採集日:2009/09/20 採集地:福島県、昭和村] [和名:ハリミズゴケ 学名:Sphagnum cuspidatum] | |||||||||||||
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福島県南部会津地方には有名な湿原が多いが、ほとんど人の訪れることのない小さな湿原・池塘も多数ある。今月20日に、それらの一つ、標高1,100mあたりの小湿地を訪れた。いくつかのミズゴケを採取したが、今日は、沈水状態で群生していたミズゴケを観察した(a)。 茎は硬い感触で、長さ10〜15cm(b)。頭部に濃紫色を帯びた個体がいくつかあった(c)。下垂枝は開出枝よりも短い(d, e)。茎の表皮細胞は矩形で表面に孔はなく(g)、横断面で3層あり、木質部との境界はやや明瞭(h)。枝の表皮には2〜3列のレトルト細胞があり首は短い(i)。 茎葉は二等辺三角形で、長さ1.3〜1.6mm、先端はわずかに尖る。舷は葉基部で葉幅の1/2以上に広がるが上部では狭い。茎葉の上半部の透明細胞背面には多数の糸があり偽孔もみられる(j〜m)。茎葉の下半部の透明細胞には糸や偽孔はない(n)。 |
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枝葉は葉先がやや鎌状にまがる披針形で、長さ2.2〜4.6mm(o〜q)、先端には数個の歯がある(r)。下垂枝の葉では、枝葉下半を押し広げると、卵状披針形になる幅広のものもある(p)。同じ一本の枝でも長い葉と短い葉とでは、長さは倍以上異なる。 開出枝の葉でも下垂枝の葉でも、透明細胞背面には貫通する孔はなく、腹面には端に偽孔がまばらにみられる(s〜x)。多くの枝葉で、透明細胞の幅が狭く葉緑細胞の幅の2〜4倍程度しかない。枝葉の横断面で、葉緑細胞は台形で、背側により広く開く(y, z)。 |
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植物体先端の枝先の葉が濃紫褐色を帯びており(c, aa)、その部分をばらしてみると紫褐色の葉の基部に柄のある球形の組織が見られた(ab〜ad)。これらの葉は雌苞葉で基部の球形の組織は若い雄器だろう。 枝葉の先端は狭く鋭頭で、透明細胞には接合面に沿って連続する子孔はなく、横断面で葉緑細胞が背側に広く開くことからハリミズゴケ節のミズゴケだろう。平凡社図鑑で属から種への検索表をたどると、ハリミズゴケ Sphagnum cuspidatum に落ちる。解説を読むと観察結果と矛盾しない。滝田(1999)にあたってみると、茎葉がやや小振りで、枝葉がとても大きいが、他の形質状態はほぼ合致する。 |
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