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[標本番号:No.725 採集日:2009/09/05 採集地:山梨県、北杜市] [和名:イクビゴケ 学名:Diphyscium fulvifolium] | |||||||||||||
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先月8日山梨県北杜市にニンギョウタケなどの観察にでかけた。その折に、登山道の裸地の斜面(alt 880m)にイクビゴケ Diphyscium fulvifolium がすっかり乾燥した状態で群生していた。米粒形の朔を包むように雌苞葉の先端が伸びていたが、葉はすっかり巻縮していた。標本を水没させるとすぐに葉が広がった。朔に帽はすでになく、ほとんどの朔の蓋は外れていた。 コケに関わるようになったばかりの頃、非常に印象的な姿だったこともあって、一目でイクビゴケだと分かった。はじめて観察したのは3年ほど前のことだった(標本No.8)。今日は、文字による記述は主観的にして観察した部位の画像を主体として列挙することにした。
葉は長楕円状舌形で、長さ4〜6mm、先端はわずかに突出する。葉身は二細胞層からなり、葉身細胞は多角形で、長さ10〜15μm、表面は細かい乳頭に被われる。中肋が葉頂に達する。中肋の横断面にはガイドセルらしきものがあり、ステライドは見られない。葉の基部では透明で矩形の葉身細胞が並ぶ。透明細胞は平滑で、葉縁に近い側では一細胞層となっている。茎の横断面には中心束が見られる。
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朔をつけた個体の上部の葉は、中肋が芒となって長く突出し、雌苞葉と区別ができない。ここでは、外側の雌苞葉として取り扱った。朔をつけない個体では、茎の先端で中肋が芒となって突出する葉を何枚か備えるものと、芒を全く持たない個体とがある。 朔を遠巻きにする外側の雌苞葉には緑色の葉身部があり、この部分は矩形で平滑。朔に接する内側の雌苞葉では、長く突出する中肋部以外は透明で、上部肩のあたりに毛状の突起がある。透明でコントラストが弱いので、撮影にあたってはサフラニンで染色した。いずれの雌苞葉でも、中央部の透明細胞は薄膜の矩形〜多角形で、基部の細胞は薄膜の偽柔組織のような姿をしている。 |
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朔は葉の間に沈み、非相称で、蓋は長い嘴状。朔には口環があり、外皮には気孔がみられる。朔の開口部は狭く、朔歯が1mmほどの長さに伸び上がっている。朔歯は白色で、外側に16本のスジをもった薄膜からなる。外側のスジ状の部分は、退化して糸状になった外朔歯が内朔歯に付着したかのような印象を受ける。スジ状の部分は細かな乳頭に被われる。膜状の部分には、さらに微細な乳頭があるように見える。胞子は小さく、径10μm前後。 |
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