HOME | 観察覚書:INDEX | back |
[標本番号:No.734 採集日:2009/10/10 採集地:秋田県、鹿角市] [和名:オリーブツボミゴケ 学名:Nardia subclavata] | |||||||||||||
|
|||||||||||||
久々に苔類を観察することになった。先に秋田県鹿角市にあるふけの湯温泉に寄った(alt 1120m)。その折に遊歩道脇の土の斜面を被っていた苔類を採集した(a)。植物体は上部が赤みを帯びる。茎は長さ6〜15mm、葉を含めた幅は1〜2mm、枝分かれは少なく、斜上する。仮根は少なく、腹葉の基部から出て透明。 葉は瓦状に重なり、卵形〜円形で全縁、円頭、接在し、茎に斜めにつき、背縁は茎に流下する。葉身細胞は多角形で、長さ25〜35μm、膜は薄く、トリゴンは大きい(i)。表面は平滑で、部分的に2細胞層となる(l, m)。油体は全細胞にあり、1細胞に1個、円形〜楕円形、10〜20μm、内部に密に微粒があり、眼点をもつものがある(i, j)。 腹葉は、茎幅と同じかやや広く、舌形〜三角形で、全縁、円頭。腹葉の葉身細胞は葉のそれと同じ。茎の下部では、腹葉の基部から仮根がわずかにでる。 |
|||||||||||||
|
|
||||||||||||
花被の部分では苞葉や腹苞葉が多肉化しペリギニュームを構成している(u, v)。苞葉と腹苞葉は、3〜4組あり、ともに葉や腹葉より大きく、円形〜半円形で、全縁、円頭。葉縁がやや波うつ。葉身細胞やトリゴン、油体は、葉のそれとほぼ同様。花被は大きく円錐形で、深く3〜4褶、先がわずかにせばまる。なお、茎の横断面で組織にはほとんど分化がない(x)。
ツボミゴケ科 Jungermanniaceae の苔類だと思う。切れ込みのない腹葉があり、花被をもつことからアカウロコゴケ属 Nardia となる。保育社図鑑の検索表をたどっていくと、オリーブツボミゴケ N. subclavata に落ちる。図鑑の解説は、アカウロコゴケ N. assamica を引用してかなり省略されている。図鑑に記述された内容は観察結果とほぼ一致する。 |
|||||||||||||