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[標本番号:No.746 採集日:2009/09/20 採集地:福島県、南会津町] [和名:ハリミズゴケ 学名:Sphagnum cuspidatum] | |||||||||||||
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9月20日以降に採取したミズゴケ標本が数十点ほど野積み状態となっている。いずれも、ミズゴケから出るきのこのホスト、およびそれらと混在していたものだ。とりあえず、きのこのホストについてはすべて同定しおえたが、検鏡写真や記述は同定に必要な十分条件だけしかやっていない。しばらくの間は、これらのミズゴケを観察することになる。
今朝観察したのは9月20日に南会津で採取したものだ(alt 1200m)。茎は長さ8〜12cm、やや固く尖ったイメージを受ける(c, d)。乾燥すると葉の縁が軽く波うつ(e)。茎の表皮細胞は矩形で孔はなく(g)、横断面で表皮細胞は3〜4層で木質部との境界はやや不明瞭(h)。枝の表皮にはレトルト細胞が2〜4列あり、レトルト細胞の首は短い(i, j)。 |
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枝葉は先端部がやや鎌状に曲がった披針形で、開出枝の葉は長さ3.5〜5.0mm(q, r)、下垂枝の葉は長さ2.2〜3.5mm(y)。いずれの枝葉も先端部は尖り数個の歯がある(s, z)。開出枝の透明細胞背面にはほとんど孔はなく、多数の糸とわずかに偽孔がある(t, u)。開出枝の透明細胞腹面には多くの偽孔とわずかに貫通する孔がある(v, w)。開出枝も下垂枝も、葉の横断面で葉緑細胞は台形〜樽型で背面側に広く開く(x)。下垂枝の葉でも透明細胞の様子は、開出枝のそれと似通っているが、腹面側の孔がより顕著となる(aa〜ad)。 |
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枝葉の先端が狭く鋭頭で、葉の横断面で葉緑細胞が背側により広く開き、茎葉の舷は基部で広がり、乾燥すると枝葉の縁が波うつことから、ハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata のミズゴケに間違いない。平凡社図鑑のハリミズゴケ節の検索表をみると、茎葉の先端は鋸歯状で、枝の表皮細胞のレトルト細胞は首が短く、茎葉は二等辺三角形で大きく、枝葉先端部の透明細胞背面には偽孔しかないことから、すんなりとハリミズゴケ S. cuspidatum に落ちる。図鑑の種の解説および滝田(1999)の種の解説をよむと、観察結果とほぼ一致する。 |
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