[標本番号:No.764 採集日:2009/10/01 採集地:群馬県、水上町] [和名:コサンカクミズゴケ 学名:Sphagnum recurvum var. tenue]
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2009年11月15日(日) |
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(d) |
(e) |
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(a) 植物体、(b) 採取標本、(c) 開出枝と下垂枝、(d) 開出枝、(e) 下垂枝、(f) 茎と茎葉、(g) 茎の表皮、(h) 茎の横断面、(i) 枝の表皮、(j) 枝の横断面、(k, l) 茎葉 |
群馬県上州武尊の登山道脇の湿地(alt 1500m)で採取したミズゴケを観察した(a)。野外では淡黄緑色に見えたが、採取標本を水で戻すと緑味がやや強くなった(b)。茎は高さ10〜12mm(d)。茎の表皮細胞は矩形で孔はなく、横断面で表皮細胞と木質部の境界は不明瞭(g, h)。
茎葉は長さ0.7〜0.9mmで三角形、葉頂はさほど尖らず、やや総状の部分がある。舷は上部では狭いが中央部から基部にかけて広がる(l)。茎葉の透明細胞には膜があり、葉頂近くでは1〜2個の貫通する孔がある(m)。枝の表皮には2〜3列にレトルト細胞が並び、首は短い。
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(m) |
(n) |
(o) |
(p) |
(q) |
(r) |
(s) |
(t) |
(u) |
(v) |
(w) |
(x) |
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(m) 茎葉上部、(n) 茎葉中央、(o, p) 開出枝の葉、(q) 同前:背面上部、(r) 同前:背面中央、(s) 同前:腹面上部、(t) 同前:腹面中央、(u, v) 枝葉の横断面、(w, x) 下垂枝の葉 |
開出枝の葉は長さ1.1〜1.3mmで長卵状披針形、葉頂には数個の歯がある。乾燥すると葉の縁が波打ち、葉上半部が軽く反曲する(ac)。開出枝の葉背面の透明細胞には上端に貫通する孔があり、腹面の透明細胞には偽孔が多数ある(q〜t)。下垂枝の葉は長さ0.7〜1.0mm、卵形〜卵状披針形。下垂枝の葉背面の透明細胞上端には大きな貫通する孔があり(y)、中央部では孔は小さい(z)。枝葉の横断面で、葉緑細胞は二等辺三角形〜台形で、背側に広く開く(u, v)。
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(y) 下垂枝の葉:背面上部、(z) 同前:背面中央、(aa) 同前:腹面上部、(ab) 同前:腹面中央、(ac) 乾燥時の葉 |
枝葉の先端は狭く、枝葉の横断面で透明細胞の底辺が背側にあり、乾燥すると葉の縁が波うつからハリミズゴケ節 Sect. Cuspidata の蘚類となる。平凡社図鑑の種への検索表をたどると、アオモリミズゴケ S. recurvum、あるいはコサンカクミズゴケ S. recurvum var. tenue となる。茎の横断面の様子、下垂枝の葉腹面の透明細胞の孔などの様子から、コサンカクミズゴケと判断した。滝田(1999)でアオモリミズゴケとコサンカクミズゴケについての記述を読むとかなり迷う。とりあえず、ここではコサンカクミズゴケとした。過去の両者標本を後日再検討することになれば、大幅に見直す必要がありそうだ。
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