[標本番号:No.799 採集日:2009/12/02 採集地:埼玉県、越生町] [和名:コカヤゴケ 学名:Rhynchostegium pallidifolium]
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2009年12月06日(日) |
(a) |
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(a, b) 植物体、(c) 採取標本、(d) 茎と枝:乾燥時、(e) 同前:湿時、(f) 枝と枝葉、(g, h) 茎葉、(i) 茎葉の上半、(j) 茎葉の葉身細胞、(k) 茎葉の先端、(l) 茎葉の翼部 |
杉林に被われてわずかしか日が差さない沢沿いの林道(alt 440m)で、径脇から突き出た腐木の表面をツヤのある蘚類が被っていた(a, b)。やわらかい感じの緑色の蘚類は、はう茎から不規則に分枝して平面的に広がり、乾燥しても葉は茎に密着したり巻縮したりはしない(c〜e)。
茎葉は卵形〜卵状披針形で、長さ2.1〜2.5mm、漸いに細くなって葉先は尖り、葉縁には微細な歯がある(g〜i)。茎葉の多くは先端部で捻れる(i, k)。中肋が葉長の2/3〜3/4に達し、先端は曖昧に消え歯などはない(i)。葉身細胞は線形で、長さ80〜130μm、幅6〜9μm、薄膜で平滑(j)。葉先端部では短く(k)、翼部では幅広の矩形〜長い多角形の細胞が並ぶ(l)。翼部の発達は悪い。
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(m) |
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(o) |
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(q) |
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(x) |
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(m, n) 枝葉、(o) 枝葉の上半、(p) 枝葉の葉身細胞、(q) 枝葉の翼部、(r) 枝の横断面、(s) 苞葉部、(t, u) 苞葉、(v, w) 苞葉の葉身細胞、(x) 苞葉基部に付着した造卵器 |
枝葉は茎葉と比較してやや小さく、若干丸みが強く、葉縁の歯が目立つ(m〜o)。葉身細胞の形やサイズ、翼部の発達は茎葉と変わらない(p, q)。茎や枝の横断面には、中心束があり、やや厚壁の小さな細胞が表皮を構成する(r)。
苞葉は長方形の途中から急に細くなって芒状に長く延び、長さ1.0〜2.8mm、葉縁は平滑で、中肋はない。苞葉の葉身細胞は線形で、長さ100〜140μm、透明な苞葉では細胞壁がやや厚い(v, w)。葉の基部には未受精に終わった造卵器が複数個付着している(x)。
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(y) |
(z) |
(aa) |
(ab) |
(ac) |
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(ae) |
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(ah) |
(ai) |
(aj) |
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(y) 胞子体、(z) 帽と朔、(aa) 朔歯、(ab) 口環と外朔歯、(ac) 外朔歯、(ad) 内朔歯、(ae, ag) 外朔歯下半部、(af) 外朔歯上半部、(ah) 内朔歯下半部、(ai) 内朔歯上半部、(aj) 朔下部の気孔 |
標本にはやや干からびて崩れかけた胞子体がいくつかついていた。朔柄は橙色で、長さ1.6〜2.1mm、表面は平滑(y)。朔は傾き非相称で、蓋はやや長く尖り、長い帽をかぶる(z)。朔歯は2列でおのおの16枚。目立ちにくい口環があり(ab)、外朔歯と内朔歯はほぼ同じ高さ(ac, ad)。外朔歯の中央から下部には横条があり、上半部は微細な乳頭に被われる(ae, af)。内朔歯は高い基礎膜をもち、上部からは歯突起と間毛がでる(ah ,ai)。朔の下部には気孔がある(aj)。
匍うタイプの腋蘚類で、羽状に広がり、毛葉はなく、葉に1本の中肋があり、細長い葉身細胞をもつことから、アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae の蘚類だろう。保育社図鑑でも平凡社図鑑でも、検索表をたどるとカヤゴケ属 Rhynchostegium に落ちる。平凡社図鑑で種の検索表をたどるとコカヤゴケ R. pallidifolium となる。種の解説を読むとおおむね観察結果と符合する。ただ、茎葉の丸みがやや強いこと、発生環境が岩上でないことがやや気になる。
標本採取にあたって、朔を綺麗な姿でつけた個体がないか探したが無駄だった。ただ一つ蓋と帽をもった胞子体では、朔の部分が黴びに侵されていた(z)。多くの朔歯が崩れていたこともあって、分離した外朔歯と内朔歯はいずれも小さく断片化されてしまった。
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