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[標本番号:No.811   採集日:2009/12/13   採集地:栃木県、栃木市]
[和名:ギボウシゴケモドキ   学名:Anomodon minor ssp. integerrimus]
 
2009年12月17日(木)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(a) 植物体、(b, d) 標本:乾燥時、(c, e) 標本:湿時、(f, g) 葉、(h) 葉身細胞、(i) 葉の先端部、(j) 葉の翼部、(k) 葉の横断面、(l) 茎の横断面

 栃木市の沢沿いにある寺社林の樹幹(alt 230m)にキヌイトゴケ属 Anomodon と思われる蘚類が多数ついていた(a)。雨後のためか、とりわけ美しい姿を見せていたので標本を採取した(b, c)。乾燥すると葉を茎や枝に密着させ、まるで糸のように細くなっていた。
 茎は不規則羽状に分枝し、葉を含めた幅が乾燥時0.5〜0.8mm、湿時1.0〜1.8mm。湿ると葉をやや扁平気味に展開する。葉は広卵形の下半部と舌形の上半部からなり、長さ1.2〜1.8mm、舌形部はほぼ同幅で先端は円頭、中肋は明るく透明で葉頂近くに達する(f, g)。
 葉身細胞は方形〜多角形で、長さ8〜12μm、表面には複数の小乳頭があって、細胞の輪郭部もやや不明瞭(h, i)。葉基部の縁には楕円形の細胞が並ぶ(j)。葉の横断面で中肋は弱く、葉面の葉身細胞は縦楕円形で、部分的に2細胞層をなしている(k)。茎の横断面に中心束はなく、表皮は厚壁小形の細胞からなる(l)。

 典型的なギボウシゴケモドキ Anomodon minor ssp. integerrimus だと思う。これまでみたギボウシゴケモドキはいずれも石灰岩壁や石灰岩の石垣についていた(標本No.568No.371No.68)。今回採取したものは、広葉樹の樹幹についていた。現地で、たぶんギボウシゴケモドキだろうと思ったが、基物が石灰岩壁でなかったので、念のために持ち帰っていたものだ。