[標本番号:No.838 採集日:2010/01/05 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:チチブハイゴケ 学名:Hypnum calcicolum]
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2010年1月13日(水) |
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(a, b) 植物体、(c) 採集標本、(d) 茎と枝:乾燥時、(e, f) 茎葉、(g) 茎葉上半、(h) 茎葉下半、(i) 茎葉の葉身細胞、(j) 茎葉先端、(k) 茎葉の翼部、(l) 茎葉横断面、(m) 茎の横断面、(n, o, p) 枝葉、(q) 枝葉基部、(r) 枝葉の横断面 |
奥多摩日原街道の白妙橋わきには岩登りゲレンデとなっている石灰岩壁がある(alt 530m)。そこの基部の壁にハイゴケの仲間が群生していた。朔柄が多数ついていたがいずれも未成熟で朔をつけた個体はなかった(a, b)。茎は石灰岩上をはい、長さ3〜6cm、水平から斜上する枝をやや規則的羽状にだす。枝は長さ1〜4cm。乾燥しても湿っていても、全体的な姿はほとんど変わらない。茎の途中から多くの朔を伸ばしている(c, d)。
茎葉は長さ2.0〜2.5mm、卵状披針形で長く細く尖り、二叉する中肋があり、上半部は強く鎌形に曲がり、非相称、先端部の縁には微細な葉がある。葉身細胞は線形で、長さ40〜70μm、幅3〜4μm、薄膜で平滑(i, j)、基部ではやや幅広で短くなり、翼部がよく発達している(k)。翼部の細胞は大形矩形で褐色を帯び、薄膜。枝葉は茎葉より小降りでやや細めだが、全体の形、葉身細胞の形や大きさは茎葉とほぼ同じ(n〜r)。
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(x) |
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(s) 朔柄の基部、(t) 朔柄と苞葉、(u, v) 苞葉部、(w) 外雌苞葉と内雌苞葉、(x) 内雌苞葉、(y) 内雌苞葉先端、(z) 内雌苞葉上部、(aa) 内雌苞葉中央、(ab) 内雌苞葉下部、(ac) 外雌苞葉、(ad) 外雌苞葉の葉身細胞 |
多数の朔をつけていたがいずれも未成熟であり、朔をつけたものはなかった。雌苞葉は短く幅広の外雌苞葉(w, ac)と、長くて細い披針形の内雌苞葉(x)からなる(s〜x)。内雌苞葉は長さ6〜8mmに及び、縦の皺が顕著で、先が鎌形に曲がることはなく、葉先の縁には歯がある(x)。内雌苞葉の葉身細胞は、線形で長さ60〜100μm、幅3〜4μm(aa)、上部ではやや短く、下部では長矩形状の線形となり、基部では短く幅広となる。外雌苞葉は広い三角形の基部と急に細くなって反曲した上半部とからなり、内雌苞葉とは明瞭に形が異なる(w, ac)。
ハイゴケ属 Hypnum は種類も多く、変異が大きいため、分類がむずかしいとされる。それらのなかで本標本は、特徴的な形質と発生環境を持っている。内雌苞葉が非常に長く、縦皺をもっていること、さらに石灰岩に生える。平凡社図鑑の検索表をたどると、すんなりとチチブハイゴケ Hypnum calcicolum に落ちる。種の解説は簡略化されているが、観察結果とほぼ符合する。
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