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[標本番号:No.840 採集日:2010/01/05 採集地:東京都、奥多摩町] [和名:ヒロハホラゴケモドキ 学名:Metacalypogeia cordifolia] | |||||||||||||||||||
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奥多摩日原街道の白妙橋近くの赤茶けた岩(alt 530m)を小さな苔類が匍っていた(a)。大きな葉をつけた個体と非常に小さな葉をつけた個体が基部で分枝していた(b, r)。茎は長さ10〜15mm、葉を含めた幅は(0.3)1.0〜1.5mm、背腹にやや扁平。葉は接在〜離在、広舌形で長さ(0.2)0.4〜1.0mm、腹縁の基部が下延し、葉先は浅くU字形に2裂する。葉の葉身細胞は六角形で、長さ30〜45μm、トリゴンは小さく、薄壁で、表面はほぼ平滑(g)。油体は各細胞に6〜20個あり、球形〜楕円形、小顆粒の集合体(g, h, i)。腹葉は幅が茎径の1.2〜1.8倍で、やや湾入し、1/3まで二裂し、側縁はほぼ全縁、基部が軽く下延する(m, o, p, q)。小裂片は三角形やら円頭状。腹葉の一部では、基部から仮根が密集して出る(e, n)。葉の背縁の細胞は中央部の細胞よりやや小さい(h, i)。無性芽は全く見られなかった。また、油体には眼点はない。
ツキヌキゴケ科 Calypogeiaceae の苔類だろう。平凡社図鑑からはツキヌキゴケ属 Calypogeia が推測される。検索表をたどってみてはたと困った。腹葉をキーとした分岐からはタカネツキヌキゴケを含む枝となるが、観察結果と符合する種がない。あらためて、「腹葉はつねに1/3以上に深く2−4裂する」枝をたどってみた。
[修正と補足:2010.01.25] |
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標本から任意に数本の個体を抽出して、腹葉の形をみた。腹葉がほとんど透明なため、水で封入したものではちょっとわかりにくかった。そこで、サフラニンで染めてみた(s〜w)。腹葉の形は潰れた円形〜楕円形で、大部分が上縁は凹頭で、中には深く二裂するものがあった。 葉の横断面をみると、葉身細胞表面には微細なベルカがあるようにもないようにもみえる(j)。改めて横断面を何枚か切ってみたが、やはりはっきりしない。そこで、葉をスライドグラスにおいて、合焦位置をずらせながら撮影したものを掲載した(x〜ab)。これをみると、葉表面の層に大きなざらつきがあることがよく分かる。また、細胞膜は「オレンジ色」にも見えなくない。
保育社図鑑によれば、アオホラゴケモドキ属の油体には「周囲に膜があり」、ヒロハホラゴケモドキの細胞膜は「オレンジ色」、「トリゴンは大きく」、「表面にベルカがある」という。一方、ツキヌキゴケ属の油体は「1細胞に0-10個、ぶどう房状、2〜数個の小粒の集合」とされる。
トリゴンの件については、井上(1974)に「角隅は三角形で小さい」とあり、細胞膜の色については「しばしばオレンジ色になることがあり」とある。要するに、トリゴンは小さく、細胞膜は必ずしもオレンジ色ではない、ということになる。これらを考慮すると、本標本はヒロハホラゴケモドキとしてよさそうに思える。ただ、典型的なものからはかなり外れているようだ。 |
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