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[標本番号:No.856   採集日:2010/03/17   採集地:千葉県、富津市]
[和名:ツクシナギゴケ   学名:Eurhynchium savatieri]
 
2010年3月23日(火)
 
(a)
(a)
(b)
(b)
(c)
(c)
(d)
(d)
(e)
(e)
(f)
(f)
(g)
(g)
(h)
(h)
(i)
(i)
(j)
(j)
(k)
(k)
(l)
(l)
(m)
(m)
(n)
(n)
(o)
(o)
(p)
(p)
(q)
(q)
(r)
(r)
(a, b, c) 植物体、(d) 標本、(e) 乾燥時、(f) 湿時、
[g〜l 茎葉]: (g, h) 茎葉 [g 最右側は一次茎の葉]、(i) 中肋背面上端、(j) 葉の先端、(k) 葉身細胞、(l) 翼部、
[m〜r 枝葉]: (m, n) 枝葉、(o) 中肋背面上端、(p) 葉の先端、(q) 葉身細胞、(e) 翼部

 先週千葉県の房総半島で佐貫城趾に寄ったとき、途中の休耕田脇で石を被うように着いたコケを採取した(a〜c)。一次茎は転石上をはい、二次茎は斜上して短い枝を不規則羽状に出す。枝は長さ6〜12mmで、乾燥すると枝葉は軽く萎れ、湿るとやや扁平気味になる(d〜f)。
 茎葉は三角状卵形で漸尖し鋭頭で、長さ1.0〜1.2mm。基部はやや下延し、葉縁には全周に渡って微細な歯がある。中肋は葉長の3/4〜4/5に達し、背面上端は鋭い刺となっている(g〜i)。葉身細胞は長楕円形〜線形で、幅3〜5μm、長さ25〜50μm、薄膜で平滑。葉先の葉身細胞は5〜8μとやや幅広で20〜30μmと短く、翼部はあまり発達していない。
 枝葉は卵形で漸尖し鋭い頭で、長さ0.9〜1.1mm、葉縁には全周に渡って微歯がある(m, n)。茎葉と同様に、中肋が葉長の3/4〜4/5に達し、中肋背面の上端は刺となっている(m〜o)。葉身細胞は茎葉と同じで、葉先や翼部の様子も茎葉のそれと変わらない(p〜r)。 、
 
 
 
(s)
(s)
(t)
(t)
(u)
(u)
(v)
(v)
(w)
(w)
(x)
(x)
(s) 一次茎の葉の横断面、(t) 枝葉の横断面、(u) 茎葉中央と茎の横断面、(v) 枝葉中肋の横断面、(w) 茎と枝の横断面、(x) 茎の横断面

 茎葉も枝葉も横断面で中肋にはステライドもガイドセルもない(s〜v)。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(u, w, x)。

 転石の埋まっていたのは休耕田の直ぐ脇のジメジメした場所で、朔をつけた個体はみつからなかった。アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae の検索表からは、キブリナギゴケ属 Kindbergia かツルハシゴケ属 Eurhynchium の蘚類に落ちる。植物体が柔らかい感触であり、枝も樹状にならないから、ツルハシゴケ属のようだ。平凡社の検索表からツクシナギゴケ E. savatieri と思われる。