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[標本番号:No.856 採集日:2010/03/17 採集地:千葉県、富津市] [和名:ツクシナギゴケ 学名:Eurhynchium savatieri] | |||||||||||||||||||
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先週千葉県の房総半島で佐貫城趾に寄ったとき、途中の休耕田脇で石を被うように着いたコケを採取した(a〜c)。一次茎は転石上をはい、二次茎は斜上して短い枝を不規則羽状に出す。枝は長さ6〜12mmで、乾燥すると枝葉は軽く萎れ、湿るとやや扁平気味になる(d〜f)。 茎葉は三角状卵形で漸尖し鋭頭で、長さ1.0〜1.2mm。基部はやや下延し、葉縁には全周に渡って微細な歯がある。中肋は葉長の3/4〜4/5に達し、背面上端は鋭い刺となっている(g〜i)。葉身細胞は長楕円形〜線形で、幅3〜5μm、長さ25〜50μm、薄膜で平滑。葉先の葉身細胞は5〜8μとやや幅広で20〜30μmと短く、翼部はあまり発達していない。 枝葉は卵形で漸尖し鋭い頭で、長さ0.9〜1.1mm、葉縁には全周に渡って微歯がある(m, n)。茎葉と同様に、中肋が葉長の3/4〜4/5に達し、中肋背面の上端は刺となっている(m〜o)。葉身細胞は茎葉と同じで、葉先や翼部の様子も茎葉のそれと変わらない(p〜r)。 、 |
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茎葉も枝葉も横断面で中肋にはステライドもガイドセルもない(s〜v)。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮は厚壁の小さな細胞からなる(u, w, x)。 転石の埋まっていたのは休耕田の直ぐ脇のジメジメした場所で、朔をつけた個体はみつからなかった。アオギヌゴケ科 Brachytheciaceae の検索表からは、キブリナギゴケ属 Kindbergia かツルハシゴケ属 Eurhynchium の蘚類に落ちる。植物体が柔らかい感触であり、枝も樹状にならないから、ツルハシゴケ属のようだ。平凡社の検索表からツクシナギゴケ E. savatieri と思われる。 |
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