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[標本番号:No.0904 採集日:2010/05/02 採集地:岡山県、高梁市] [和名:ヒメスズゴケ 学名:Forsstroemia cryphaeoides] | |||||||||||||
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岡山県高梁市の石灰岩地域で、樹幹にセイナンヒラゴケと隣接して着生する蘚類を観察した。一次茎葉樹幹を匍い、二次茎は立ち上がり、不規則に分枝する。枝葉は乾燥時、覆瓦状について葉が縮れることはない。湿ると葉を展開させる。二次茎は長さ10〜25mm、枝は長さ3〜10mm。葉を含めた枝の幅は湿時0.8〜1.2mm、乾燥時0.3〜0.6mmと、乾湿で枝の幅がまるで異なる。 枝葉は長さ0.5〜0.8mm、卵形で漸尖し、葉先は鋭頭、葉縁は全縁。中肋が葉の中央よりやや上まで延び、しばしば先端付近で枝分かれする。葉身細胞は楕円形〜丸みのある菱形で、長さ10〜20μm、平滑でやや厚膜、上半部では小さく下半部ではやや大きい。葉の横断面で、中肋は葉面の細胞とよく似た形のものが2層をなしている。葉の翼部は分化せず、葉縁の細胞が扁平な楕円形となっている。茎や枝の横断面に中心束はなく、表皮細胞は厚膜でやや小形。 |
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外雌苞葉は2〜3mmと長く、長卵形〜矩形の基部をもち漸尖して針状に伸びる。雌苞葉の細胞は丸みを帯びた菱形〜矩形で、長さ20〜35μm、厚膜で平滑、基部では葉身中央より大きくなる。雌苞葉の中肋は葉長の3/4あたりに達する。 胞子体は雌苞葉に沈生し、柄は0.1〜0.3mmといたって短い。朔は直立し相称。朔壁に気孔は見つからなかった。 採取した標本には朔が多数ついていたが、いずれも崩れていて、朔歯が満足についたものはなく、帽や蓋をつけたものもなかった。イトヒバゴケ科 Cryphaeaceae スズゴケ属 Forsstroemia の蘚類だろう。平凡社検索表からはヒメスズゴケ F. cryphaeoides に落ちる。図鑑の種の解説はいたって簡単なものだが、観察結果とほぼ符合する。Noguchi(Part3: 1989)にもあたって詳細を確認してみたが、間違いなさそうだ。 |
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