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[標本番号:No.0905 採集日:2010/05/02 採集地:岡山県、高梁市] [和名:アナシッポゴケモドキ 学名:Pseudosymblepharis angustata] | |||||||||||||||||||
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岡山県高梁市の石灰岩上に群生していたセンボンゴケ科 Pottiaceae の蘚類を観察した。葉は乾燥して強く巻縮していたが、水霧を吹きかけるとにわかに葉が広がった(a)。乾燥すると葉はパイプ状となって強く巻き込み、湿ると広がって長く伸びる。 葉は線状披針形で、基部は卵形で鞘となって茎をだきこみ、長さ4.5〜6.5mm、葉縁は全縁で、先端は針状に尖る。葉の基部は透明となり暗い葉身部とV字状に明瞭な境界をつくる。中肋は葉先に達する。葉のKOH反応は明褐色〜黄金色。 葉身細胞は方形で、長さ8〜12μm、厚膜で表面には密に小乳頭があって暗い。葉の翼部は明るく透明で平滑な矩形の細胞からなり、葉縁にそってさかのぼり、濃色で暗い葉身部とは斜めに境界をつくっている。葉先端部の細胞は長楕円形で表面は平滑。中肋の腹面は、葉身部と同じような小乳頭に密に覆われるが、背面は平滑。葉の横断面で、中肋にはガイドセルと背腹両面にステライドがある。茎の横断面に中心束はなく、表皮細胞は大形で薄膜。 朔をつけた個体はみつからなかった。平凡社図鑑でセンボンゴケ科の検索表をたどると、すんなりとアナシッポゴケモドキ属 Pseudosymblepharis におちる。葉基部が鞘状となって他の部分より幅広であることが検索を容易にしてくれた。この属は日本産1種とあって、アナシッポゴケモドキ P. angustata だけが掲載されている。種の解説を読むと観察結果とほぼ一致する。「葉基部の大形で薄壁,透明な細胞群は葉縁にそってせりあがり,中部の緑色細胞群と明瞭なV字形の境界をなす」という意味が、本標本の観察でようやく理解できた。 |
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