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[標本番号:No.0919   採集日:2010/05/03   採集地:岡山県、新見市]
[和名:キヌヒバゴケ   学名:Dicradiella tricophora]
 
2010年5月21日(金)
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(k)
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(l)
(l)
(a) 植物体、(b, c) 標本、(d) 乾燥時、(e) 湿時、(f) 茎と葉、(g, h, i) 茎葉、(j) 茎葉の先端、(k) 茎葉の葉身細胞、(l) 茎葉の翼部

 岡山県で採集したコケがまだいくつも残っている。そのうちの一つ、5月3日に新見市の鍾乳洞脇で木の枝から長く垂れ下がった蘚類を観察した(alt 420m)。樹の枝から垂れ下がり、長いものでは60cmに達する。光沢があり、樹枝を匍う部分は褐色を帯びやや大きな葉をつける。枝は茎からほぼ直角に出て、枝の基部の葉は扁平気味につく。葉を含めた茎の幅は3〜5mm、枝先は細紐状となる。扁平につく枝葉は乾燥しても縮れることなく、展開したまま。
 茎葉や枝先の葉は長さ2.5〜4mm、披針形で長く尖り、先端は透明な毛状でジグザグとなり、葉縁には全周にわたって微細な歯があり、中肋はない。葉身細胞は線形で、長さ60〜120μm、薄膜で中央に一つに乳頭がある。翼部はやや分化し、長い六角形〜紡錘形の細胞が並び、基部に方形の細胞もみられる。
 
 
 
(m)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
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(r)
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(s)
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(t)
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(u)
(u)
(v)
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(w)
(w)
(x)
(x)
(m, n, o) 枝葉、(p) 枝葉の葉身細胞、(q) 枝葉の翼部、(r) 葉の横断面、(s) 枝の横断面、(t) 朔柄と苞葉、(u, v) 雌苞葉、(w) 雌苞葉の葉身細胞、(x) 胞子体

 枝葉は長さ2.5〜3.0mmで、卵形の基部から急に細くなって延びる。枝基部の葉は深く凹み先端は鋭頭となり、枝先の葉は長い毛状に伸びる。葉身細胞や翼部の様子は茎葉とほぼ同様。茎や枝の横断面には中心束があり、表皮はやや厚膜の細胞からなる。雌苞葉は披針形で、長さ1.5〜2.5mm、下部は鞘状となり急に細くなって鋭頭。雌苞葉の葉身細胞は線形で、表面に乳頭などはみられない。
 朔は長さ1〜1.5mm、卵形〜円筒形で直立し、相称。朔柄は長さ1〜2mm。朔歯は二重で各16枚。外朔歯の下部には横条があり、上半部は乳頭で覆われる。内朔歯の基礎膜は低く、短く太い間毛がある。朔の基部には気孔がある。
 
 
 
(y)
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(z)
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(aa)
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(ab)
(ab)
(ac)
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(ad)
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(ae)
(ae)
(af)
(af)
(y) 朔歯、(z) 外朔歯、(aa) 外朔歯下半、(ab) 外朔歯上半、(ac) 内朔歯、(ad) 内朔歯下半、(ae) 内朔歯上半、(af) 朔の気孔

 ハイヒモゴケ科 Meteoriaceae キヌヒバゴケ属 Dicradiella のものだろう。葉に中肋がなく、葉身細胞に一つの乳頭があることが大きな決め手となる。平凡社図鑑によれば、この属には「日本産1種」とありキヌヒバゴケ D. tricophora だけが掲載される。種の解説を読むと観察結果とほぼ符合する。なお、保育社図鑑では、トサノサガリゴケ Barbella enervis として、イトゴケ属 Barbella の1種として掲載されている。